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どこまで進む、ガジェットのワイヤレス化。IoTを超えた利用体験の先へ

2023.7.31

IoT(モノのインターネット)時代が到来し、インターネットに常時つながる機器が増えるにつれ、ケーブルを使わないワイヤレスの環境も整備されてきました。とりわけ近年は、新型コロナ感染症対策として「非接触」が注目されています。私たちが普段何気なく利用しているガジェット(コンパクトで利便性の高いIT機器)に搭載された、無線技術やワイヤレス充電。進化するワイヤレスの今と未来を考えます。

Society 5.0の実現へ向け、整備される多種多様なワイヤレス環境

今の社会では多くの人がイヤホンやスピーカー、マウスなどをワイヤレスで利用しています。そもそも携帯電話だってワイヤレス。スマホにワイヤレスのイヤホンをつなげばハンズフリーで通話できるため、「誰もいないところに向かって喋っている人」を見かけることも珍しくなくなりました。

この、電波に情報を乗せて飛ばすという「無線技術」は、150年ほど前から研究されてきました。最初は声を乗せるだけでしたが、そのうち映像が送れるようになり、今ではコンピュータを使って大量のデータを送ることができます。通信規格も増え、Wi-Fi※ や4G/5G、省消費電力のLPWA(Lan Power Wide Area=長距離通信に適した規格)、ICタグなどに使われているRFID(Radio Frequency Identification=情報を読み書きできる自動認識機能)なども登場。長距離無線を使えば人工衛星や宇宙ステーションなど、宇宙とのやり取りさえ行えます。

ちなみに、ワイヤレスと似た言葉には「コードレス」がありますが、コードレスは充電やバッテリー技術の進歩によって、電気コードを外しても動く機器のことで、無線通信とは別物です。また、TVなどのリモコンは電波ではなく赤外線を使っているので、正確に言うと「無線通信」には含まれません。

こうしたワイヤレス化が進む一方で、日々欠かせないのが充電です。いっそ充電(給電)もワイヤレスでできたらもっと便利なのでは。Society5.0(ソサエティ5.0=現実と仮想空間の一体化で発展と問題解決が両立した社会)の実現へ向け、次は、電波にエネルギー(電気)を乗せて送る「無線充電(給電)」の研究が注目されています。

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ワイヤレスイヤホンにワイヤレス充電、電子決済も 最新ガジェットで便利な日常へ

無線LAN Wi-Fi

電気は電線で送るのが当たり前だと私たちは思ってきました。ところが、実は電線がなくても、電波を使えば電気を送ることができるのです。その手段のひとつが、電磁誘導を使う方法です。以前にもご紹介しましたが、これは送る側・受け取る側の両方にコイルを入れておき、片方に磁界を発生させて、もう一方に電気を送るという仕組み。すでにスマホや電動歯ブラシ、シェーバーなどの充電に活用されていますし、自動改札や交通系のICカード、電子決済にも欠かせない技術です。ただし、電気を送る側と受け取る側が密着しているか、数cmほどの近距離にある時しか利用できません。

もっと遠くの機器まで無線で給電するにはマイクロ波を使います。この方法なら工場内にある多くのセンサーやロボット、飛んでいるドローンにまで給電することが可能です。500メートル先にワイヤレスで電気を送る実験もすでに成功しています。さらには宇宙で太陽光発電した電力をこの方法で地球に送るという壮大な計画まで立てられています。

無線給電技術が確立すれば、私たちはバッテリーの残量を意識せず電気製品を利用できるようになります。驚くべきことに、ある大学の研究チームは、壁や天井、床までがワイヤレス電源になった部屋を作り上げました。部屋の中にいるだけで、Wi-Fiと同じように電気が給電されるようになったら。様々な最新ガジェットは、もっと便利に、もっと快適に利用できるでしょう。

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非接触は生活を便利にするだけじゃない。ワイヤレスがつなぐ近未来のテクノロジー

無線LAN Wi-Fi

ワイヤレス技術は、IoT時代をとても便利なものにしました。これだけ多くのデバイスがインターネットにつながる時代、通信や充電にケーブルが必要不可欠なら、いたるところがケーブルだらけになりますよね。

とはいえ、ワイヤレスのメリットは「利便性」だけではありません。例えばケーブルが不要になったおかげで、洗面台等の水周りでも安心して歯ブラシやシェーバーの充電ができます。またワイヤレスで充電できれば金属同士が接触する回数も減り、デバイスやスイッチの寿命を延ばすことにもつながります。非接触の自動改札や電子マネーのおかげで渋滞やレジ待ちが解消され、現金に触れることが減って衛生面でも安心ですよね。さらには体内に埋め込まれたペースメーカーなどの医療機器を手術で取り出すことなく、遠隔で充電することも可能になりますから、患者さんの負担を大きく減らすこともできます。

もちろんワイヤレス給電、特にマイクロ波を使った無線給電には、技術的な面だけでなく、人体への影響や他の電波への干渉など、社会的な課題や不安も残されています。それでも電波法が改正されるなど、マイクロ波を使った中長距離の無線給電に関する研究をしやすくするための法整備も行われました。夢のワイヤレス給電を現実化させるべく、政府や多くの企業が研究に取り組んでいます。

今後、無線給電の必要性はますます大きくなるでしょう。ワイヤレス技術が、Society 5.0やスマートシティ実現への道をつなごうとしています。

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ワイヤレス給電、データ通信、ワイヤレスにもいろいろ。IoE社会へ向け、高まる期待

無線通信や無線給電など、非接触が一般的になりつつあるIoT社会。それぞれの分野で、安全に、安定した通信・給電を目指す研究開発が進められています。どこを見てもケーブルがなくなり、IoE(Internet of Everything=すべてのインターネット)社会が到来するのも、そう遠くないかもしれませんね。

※「Wi-Fi」は「Wi-Fi Alliance」の商標又は登録商標です。


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【執筆】ユピスタ編集部
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