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ゲーマー必見?プレイを支える注目のディスプレイ、量子ドットモニターとは

2023.11.13

映像制作技術が進化した今、特にゲーマーにとってゲーム専用の高性能ディスプレイ・モニターは欠かせないものとなっています。
話題の「量子ドット」を使えばますます彩度が増し、現実と見間違うほどリアルな映像表現が可能に。そんな量子ドットとはどんな技術なのか。映像の美しさと低消費電力を両立し、ノーベル賞でも注目を集めた量子ドットモニターを紹介します。

次世代のディスプレイとして注目を集める量子ドットとは?

2023年のノーベル化学賞に、量子ドットの研究者たちが選ばれました。量子ドットは数ナノサイズという非常に小さな半導体の原子を数百〜数千個集めた結晶体です。ナノは1ミリの100万分の1を表す単位で、量子ドットはインフルエンザウイルスの10分の1ほどのサイズです。これはサッカーボールと地球くらいの違いがある、想像を絶する微小な世界です。

これほど小さな世界の話は、私たちの生活とあまり関係がない気がしますよね。そもそも「量子ドット」という言葉を聞いたことがない人のほうが多いかもしれません。ところが、ゲーマーや最新のコンピュータに興味がある人にとって、量子ドットは大注目の技術なのです。なぜならば、量子ドットにはモニターの色合いを大きく左右する不思議な性質があるからです。

量子ドットには吸収した光の波長を変化させる性質があります。波長を変えるということは、光の色を変えるということです。しかも、量子ドットはサイズが変わると異なる色を発します。例えばサイズの大きい量子ドットに青い光が当たれば赤になり、もっと小さい量子ドットなら青が緑に変わって発光します。つまり、量子ドットのサイズを変えれば様々な色を作り出すことが可能ということになります。そして、これをテレビの技術に応用して開発されたのが、次世代ディスプレイと呼び声の高い「QLED」です。

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発色の違いでゲーミングモニターが変わる!鮮やかな量子ドットモニターの特徴

量子 ドット とは

従来の液晶テレビではR(赤)・G(緑)・B(青)を含む白色LEDのバックライトに、RGBのカラーフィルターをかけて色を分離して必要な色を取り出していました。しかし、この方法はコストを抑えられるものの、赤や緑が弱い一方で青が強く出やすく、色の純度が低くなるといったデメリットがありました。さらに、多くの光がフィルターを通る時に吸収されてしまい、大きなロスが発生します。

これに対して量子ドットの技術はフィルターではなく、量子ドットのサイズを変えることで色を変換します。そこで、いろいろなサイズの量子ドットをシートに練り込み、それをバックライトと液晶の間に置くことで、純度の高い色を取り出す仕組みが考案されました。量子ドットのサイズや配合を緻密にコントロールすれば、フィルターなしで効率よく鮮やかな色を再現することができるのです。この量子ドットを練り込んだシートを使ったモニターは、これまでの有機EL(OLED=有機物を使って発光するモニター)に対し、「Quantum Dot(量子ドット)」の頭文字をとって「QLED」と名付けられました。

QLEDを採用したテレビやゲーミングモニターは、すでに様々なメーカーから市販されています。これらは表示できる色の範囲が広いので、実際に目で見たままの色で臨場感のある映像が楽しめます。ゲーマーにとっては、スピード感のあるゲームでも残像感がない、いわゆる「ヌルヌル」動く画面操作も可能になりました。

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ゲーミングディスプレイだけじゃない!量子ドットのさらなる活用

量子 ドット とは

ゲーム用モニターで量子ドットの特性をより活かすためには、バックライトやエンジン選びも重要なポイントとなります。量子ドットモニターの性能を引き出せる高輝度のバックライトが搭載された高解像度モニターがベスト。もちろんモニターの解像度が上がるとパソコンやゲーム機への負荷も高くなるので、QLEDモニターを導入するならパソコンやゲーム機のスペックを確認しておくことが必要です。

量子ドットの技術が活用されているのは、テレビやコンピュータの世界だけではありません。医学の分野では、例えば量子ドットを体内に入れ、腫瘍などに集めて発光させます。すると量子ドットがマーカーとなり、腫瘍を見分けて治療や切除をする時に役立ちます。

もともと量子ドットは生化学分野での活用が先行していました。ただし、量子ドットにはカドミウムや鉛など、人体や環境に有害な金属が含まれているため、近年ではカドミウムを含まない量子ドットの開発が進んでいます。

最近はミニLEDと組み合わせたスマートフォンも登場しており、量子ドットは温室のフィルムや光ファイバーに加えて非常に小さなセンサー、太陽電池の薄型化などにも貢献することが期待されています。ノーベル賞の選考委員は、「量子ドットは人類に最大の恩恵をもたらしつつある」と語りました。私たちが量子ドットを目で見ることは不可能ですが、今後は様々な分野で「量子ドット」という言葉を耳にすることが増えそうですね。

ゲーミングモニターを超えて――量子ドットが魅せる未来

ナノメートルの世界で起きる不思議な現象が、テレビやゲーミングモニターの色をより鮮やかに変えつつあります。肉眼で見る世界をモニターにもリアルに再現する量子ドット。これからどんな分野で活用されていくのか、楽しみに見守り続けていきたいものです。


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【執筆】ユピスタ編集部
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