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ブロックチェーンに続く次のテクノロジー「量子コンピュータ」って何!?

2023.3.20

「スパコンが1万年かかる計算を、3分20秒で解いた」と、大きな話題を集めた量子コンピュータ。量子コンピュータとはどんなコンピュータで、従来のコンピュータとどう違うのでしょうか。時代を大きく変えた新時代の技術・ブロックチェーン(ブロック型の取引を時系列でつなげた記録)から、さらに先の未来へ。量子コンピュータの現状と、その実用化が社会に与える影響をわかりやすく解説します。

重ね合わせ?量子もつれ?従来のコンピュータと量子コンピュータの違いとは

まず、量子コンピュータの「量子」とは何でしょうか。量子というのは目に見えない非常に小さな粒、または、存在する最も小さなエネルギーの粒を指します。たとえば原子、原子を形作る電子や中性子などが量子です。こうしたミクロの世界では、私たちが高校の数学や物理で学んだ法則に当てはまらず、直感で理解することも難しい不思議な現象が起こります。量子コンピュータは、そのような現象を利用して計算を行うコンピュータです。

量子が起こす不思議な現象のひとつが、量子の「重ね合わせ」と呼ばれるものです。これは「どちらに存在するか確定しない状態」と言われ、立って回転しているコインに例えられます。コインが回っている時は、回転が終わって倒れるまで、表でも裏でもあり、同時にどちらでもありません。この状態は量子を操作することで作り出すことができます。

量子コンピュータ

これを利用すると従来のコンピュータ(古典コンピュータと言われる)が「0か1か」で表していたものを、量子コンピュータでは「0でもあり1でもある」と表すことができ、それによって並列計算を非常に高速で行うことが可能になります。例えば4桁の数字を合わせて解錠する鍵がありますよね。0000から9999までの数字を順番に試していくのは、組み合わせが10000通りもあってとても大変ですが、量子コンピュータならあっという間に高確率で答えを見つけることが可能です。
また、重ね合わせ状態の量子同士が影響しあい相関することは「もつれ」と呼ばれます。
例えば、コインを投げて表なら1点が貰え、裏なら0点、という場合、「コインが表でもあり裏でもある」重ね合わせ状態の量子と、「貰った点数が1点でもあり0点でもある」状態の量子のふたつで表すことができます。この時、ひとつ目の値でコインの表裏の結果がわからなくても、ふたつ目の量子の値が「1点貰った」という結果を出していたら、ひとつ目も「表」だったと確定します。片方の値が決まるともう片方も決まる。このイメージが「量子もつれ」です。

量子コンピュータは高性能ではありますが、万能というわけではありません。少なくとも当分の間は、古典コンピュータが苦手な分野をカバーするというような、用途を限定した使い方になると考えられています。

量子ゲート方式と量子アニーリング方式。世界中が実用化に向けてしのぎを削る

量子コンピュータ

量子コンピュータは大きく分けると、汎用型向きの「量子ゲート方式」と、特化型向きの「量子アニーリング方式」に分類できます。量子ゲート方式は、量子コンピュータ用のプログラムを使って様々な問題の答えを探すことができます。従来のコンピュータに似ていますね。一方、量子アニーリング方式のアニーリングは、日本語で「焼きなまし」という意味。たくさんの組み合わせの中から最適な組み合わせをすばやく探すことが得意です。
開発が進んでいるのは2011年にカナダの企業が成功させた量子アニーリング方式ですが、扱える量子のビット数は最新機種で5000程度。量子ゲート方式に至っては50ビットほどにとどまっており、実用化にはこれを少なくとも100万以上に増やす必要があります。

実は、利用する量子の種類によっても開発のスピードは変わります。最も進んでいるのは物質を極低温で冷やすと起こる「超電導状態」を使った量子コンピュータですが、光やイオン、シリコン、中性子など、他の量子を使った量子コンピュータの開発も進められています。ただ、量子は普通の状態だとあっという間に消えてしまうので、操作できる状態にするには巨大な冷凍庫などの大掛かりな装置が必要です。エラーを修正する機能やソフトウェア、技術者の育成など、ハード・ソフトの両面で、解決すべき問題は山積しています。

2018年、アメリカは量子コンピュータの開発に1400億円(5年分)の国家予算を計上。日本も200億円以上の予算を計上しました。世界中の政府や企業が量子コンピュータ開発に向けてしのぎを削っています。それでも、量子コンピュータ開発はマラソンに例えると、全42キロのうちまだ5キロ程度の地点にいると言われ、実用化には10年単位の時間がかかるとみられています。

量子コンピュータが得意な最適化問題で発展する社会

量子コンピュータ

さて、ここまで難しい話をしてきましたが、一番気になるのは量子コンピュータが使えるようになったらどうなるの?役に立つ?というところですよね。
では、量子コンピュータが実用化されると社会はどのように変わるのでしょうか。量子コンピュータは並列計算を高速で行えるので、例えば大人数の従業員のシフトを組むといった作業は大得意です。工場の生産性を上げ、コストを下げるためのシミュレーション、また温室効果ガスの排出量削減や回収、通信料削減などのシミュレーションにも活躍します。

交通を最適化させることで、渋滞の緩和にも役立ちます。実際に川崎市では量子コンピュータを使った交通流計測の実証実験が2021年に行われました。量子コンピュータの活用によって、ドライバーに迂回路を提案する、車の流れをよりスムーズにするため、信号機を柔軟に制御するなどの方法で、渋滞を緩和するシステムの実現を目指しています。将来的に多くの車が自動運転で走行するようになり、頭上を飛行するドローンが増えると、量子コンピュータによる交通制御は必須となるでしょう。また、災害時に短時間で避難できる最適ルートを探し出す際なども量子コンピュータが役に立ちます。

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様々な要素やリスクを考慮に入れたうえで、最適な解答を短時間で示す量子コンピュータの機能は、投資などの金融面でも活用できます。さらに、新薬の開発では、多くの分子を組み合わせるという手順が必要ですが量子コンピュータはこうした実験にも利用できます。実用化にはもうしばらく時間がかかりそうですが、量子コンピュータが社会実装されたあかつきには、私たちの暮らしを向上させるためのツールとして、大いに役立ってくれることでしょう。

古典コンピュータと量子コンピュータの共存が創る未来

古典コンピュータは将来的に量子コンピュータが実用化されてもなくなりません。古典コンピュータと量子コンピュータは、お互いの得意分野で共存していくと考えられています。とはいえ、私たちの暮らしや社会全体に大きな影響を与える量子コンピュータ。開発の行方を楽しみにしたいものですね。


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【執筆】ユピスタ編集部
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