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えっ、充電が切れちゃった!電池の残量表示に使われる青色LEDはユニバーサルデザインのひとつ!

2024.4.15

LED照明は白熱灯や蛍光灯に比べて断然コスパが良いと人気です。しかし、この電球を作るために必要不可欠だった青色LEDの開発には様々な苦労がありました。特定の色覚特性(色弱)を持つ人に対応したカラーユニバーサルデザインにも大きく貢献する青色LED。日本人が開発し、ノーベル賞を受賞した青色LEDを振り返ります。

光る半導体・LEDとは?LEDの基本と100年の歴史

電池残量 LED

物質は電気を通す「導体」と通さない「絶縁体」に分けることができますが、その中間、つまり条件によって電気を通したり通さなかったりする「半導体」と呼ばれる物質があります。約100年前から進められてきた研究で、ある半導体は電気を通すと光ることが分かり、「LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)」が生まれました。

現在、LEDは照明器具やモニターに広く活用されています。白熱灯や蛍光灯と比べて寿命が非常に長い上に消費電力が少なく、さらには熱や紫外線を放出しないなど、LEDには多くのメリットがあり、一般家庭でもLED電球を利用する人が増えています。

しかし、LEDが広く活用されるまでには多くの苦労がありました。LEDは使用する半導体の種類によって様々な色を放ちますが、主な材料として使われるのは、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、N(窒素)、In(インジウム)などです。1962年には赤色LEDの実験が早々に成功し、それから10年ほどの間に黄色や黄緑、橙(オレンジ)などのLEDが生み出されました。

ところが、青色LEDの開発は難しかったのです。様々な研究者がチャレンジしたものの失敗に終わり、ついに20世紀中の実用化は不可能だと考えられるようになりました。しかし、これに成功したのが日本の3人の科学者です。

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青色LEDの開発はなぜ困難だった?実現までの研究秘話

青色LEDが実現に至るプロセスは困難を極めました。青色LEDの主な材料となるのは窒化ガリウム(GaN)ですが、その扱いが非常に難しかったのです。

研究を続けても、青色LEDに必要な窒化ガリウムのきれいな結晶を作ることも、その結晶を機能させることもなかなか成功せず、1960年代に始まった青色LEDの研究は徐々に下火となっていきます。70年代初めには多くの研究者が諦めてしまいました。

そうした中で研究を続けたのが赤崎勇博士と、その教え子である天野浩博士です。二人は他の研究者が脱落していく中で30年にわたって研究を続け、1回に2〜3時間かかる実験を元旦以外に毎日何度も繰り返しました。その回数は2年で1500回以上にのぼるそうです。そして1985年、とうとう世界初の窒化ガリウムの結晶化実験が成功します。しかも、本来なら1000℃程度の高温にすべき加熱装置が故障してしまい、数百℃程度の低温で行った実験が成功につながったと言いますから、なんともドラマチックです。

そして1989年、ついに二人の研究者によって青色LEDが開発されました。5年後の1994年には現カリフォルニア大学の中村修二博士が、その100倍明るい青色LEDを作り出し、実用化・製造化への道が開かれます。この3人は2014年にノーベル物理学賞を受賞しました。

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青色LEDはなぜすごい!? カラーユニバーサルデザインや白色LEDに貢献

電池残量 LED

青色LEDはなぜこれほど待ち望まれたのでしょうか。まず、青色LEDの実用化によって光の三原色「赤・緑・青」が揃ったことで、この3色を組み合わせて白色LEDが作り出せるようになりました。この白色LEDによって、フルカラービジョンの美しい映像表現が可能となったのです。

また、青色LEDは色覚異常(色弱)の人に分かりやすい配色を行うカラーユニバーサルデザインにも貢献しています。電化製品の電源や電池の残量を表示する場合、よく使われるのは赤(オレンジ)や緑色のランプです。しかし、色覚に特性を持つ色覚異常の人の中には、この赤と緑の組み合わせを見分けることが困難な人がいます。また、面積の少ない赤のLEDは点灯しているのかどうかがわかりづらく、そのため家電製品やゲーム機の緑色から赤に変化する電池の残量表示に加え、オレンジや赤の充電警告に気づかないまま突然電源が落ちてしまう、OFFにしたと思っていた電源が入りっぱなしだった…というケースが発生していました。青色LEDを使用することで、家電製品の電源ランプをはじめ、注意を促す様々な信号機やライトの色をより判別しやすい形に割り当てられるようになりました。

白熱電球の寿命は約1500時間、蛍光灯は1万時間前後と言われますが、LEDの寿命は約4万時間。しかも、消費電力は白熱電球や蛍光灯よりはるかに少なく、コストが高いことを考えてもかなりの節約になります。交換不要で消費電量が少ないということは、地球環境にも優しいということです。青色LEDは人にも地球にも優しい明かりを実現したのです。

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電池の残量表示から持続可能な社会実現まで〜青色LEDが成し遂げたこと

LEDは私たちの生活を大きく変えました。日本人科学者による長年の努力のおかげで、電池の残量表示が見やすくなり、ディスプレイは美しくなり、コスパの良いLED照明が生まれたのです。加えてエネルギー効率が良いLEDは地球に優しく、持続可能な社会の実現にも欠かせません。これらのすべてを可能にしたものこそ、青色LEDなのです。


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【執筆】ユピスタ編集部
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