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ホログラムの教室利用。MRが子どもたちの教育にもたらす効果と可能性

2023.4.24

身近なものになりつつあるAR(拡張現実)/VR(仮想現実)やMR(複合現実)技術。こうした技術をホログラムと組み合わせ、教育の場で活用しようという試みが始まっています。これらのホログラム教材、MR教材にはどんなメリットがあるのでしょうか。ホログラム×MRが子どもたちの教育にもたらす効果と可能性を探ります。

ホログラフィとは?ホログラムはMR(複合現実)と融合し、教育を変える

ホログラムは、被写体を立体的に記録したものです。その仕組みについては以前にご紹介しましたが、写真が光の色(波長)と強さ(振幅)を記録するのに対し、ホログラムはそれに加えて、光がどこから来ているか(位相)を記録します。記録されたものに記録した時と同じ光を当てると、三次元的な立体として再現することができます。なお、正確にはホログラムとは記録された媒体を指し、その技術をホログラフィ(フォトグラフィ由来の言葉)といいます。

ただしホログラムの作成には高度な技術と大掛かりな装置が必要で、本格的な実用化にはまだ至っていません。しかしながら、浮かぶ立体映像というアイデアは面白いものですし、使い道も多そうですよね。そこで、ホログラムのようなもの、いわゆる「疑似ホログラム」を作り出す様々な方法が考案されてきました。例えば、透明〜半透明な幕を重ね貼りしたりミストを噴射させたりして、その向こう側からプロジェクターで映像を映すやり方。あるいは他の場所に被写体を隠しておき、光を当ててステージ上の板に映り込ませる、いわゆるペッパー・ゴーストという手法。こうした疑似ホログラムは、既にさまざまなコンサートやテーマパークで活用されています。

最近ではARやMR技術を使った疑似ホログラムも登場しました。MRとは複合現実(Mixed Reality)の略語で、現実世界にデジタル映像を重ね合わせ、その場に存在するかのように表示して操作する技術です。この手法は今、教育の分野で注目を集めています。

教育の平等にも貢献!ホログラムは教育分野でどのように使われる?

ホログラム

現在、ARやMRを活用した疑似ホログラムの教材は様々な企業から提供されています。それらは専用のゴーグルをかけることで、内蔵されたカメラが目の前の景色をスキャンして、CG合成した映像が現実に重ねて映し出されます。すると教室の中に、例えば火山や地層、人体などが浮かび上がるのです。子どもたちは360度、さまざまな角度から映像を眺め、火山の断面をのぞいたり、自分の指で心臓の標本を拡大縮小したり、サメの骨格を観察したり。まるで対象物がそこにあるかのような体験をすることができます。

他には、世界の様々な場所を旅行できるソフトも。教室にいながら海外の美術館を訪ね、自分の机の上に絵画や彫刻の映像を出現させて鑑賞することができます。火山の爆発や竜巻など、近くでは絶対に見ることのできない自然現象を間近で体験したり、そのプロセスを目の当たりにしたり。さらには外国で模擬会話しながら語学トレーニングを行ったり、タイムスリップして過去の建造物を見学したりすることさえ可能です。「STEM教育(理数系の知識を深め、考える力を養う教育方針)」に特化したソフトでは、空中に映し出した3Dモデルで数学や工学などを学ぶことができます。

こうしたソフトは学校だけでなく、企業における教育や研修にも活用されています。リアルでは持ち込めないような大型機器も、ホログラムで研修室に再現すれば、新人でも安全に操作のシミュレーションが行えます。

進むSTEM教育。子どもたちにホログラムがもたらす可能性とは

ホログラム

教育の場においてホログラムを利用することは、多くのメリットをもたらしてくれます。まずは、その圧倒的な面白さ。子どもたちは好奇心をかき立てられ、積極的に学ぶようになるでしょう。また、三次元で見ることによって理解がより深まるという利点もあります。「百聞は一見に如かず」の言葉通り、いくら言葉で説明されても分からないことが、見れば一瞬で理解できることは多いですよね。実際、ホログラム教材の使用で80%を超える子どもの成績上がったという実例も報告されています。

また、ホログラム教材は失敗を恐れずチャレンジする機会を提供してくれます。例えば医学生や獣医学生が現実の施術・手術に失敗すれば大変なことになりますが、MRやホログラムなら失敗を過度に恐れず、練習を重ねることができます。またVRと違って体験しながら他の生徒と会話をしたり、ノートを取ったりもできるのもメリット。アプリ化された教材は遠隔授業にも利用できますし、分野に合わせて多くの教材を準備する必要がないので、先生の負担も減らせます。

日本におけるXR(クロス・リアリティ=AR/VR/MRなどの総称)市場の成長率は、世界のレベルから見ると遅れがちです。2017〜2022年の世界的な「AR/VR」年間平均成長率が71.6%なのに対し、日本は17.9%にとどまっています。これはAR/VRへの消極的な意識がネックになっていると考えられており、教育現場での活用はこうした意識を突破するのにも有効だとされています。もちろん導入コストや操作スキルなどの課題はありますが、ホログラムを使って学習することにより、子どもたちは知識だけにとどまらないさまざまな能力を伸ばすことができるのです。

夢のホログラム通話 手のひらに乗せたデバイスから映像が浮かび出す未来へ

近い未来、学校では人間の教師に代わってホログラムの仮想実体が授業を行うだろう、と予測する人もいました。残念ながら現実の技術はまだその域に到達していません。しかし、発達段階にある子どもたちが教室の中で、進化しつつある新しい技術に触れることによって、私たちには想像もつかないような未来を作っていくのかもしれませんね。


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【執筆】ユピスタ編集部
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