2025年4月に開幕したEXPO 2025 大阪・関西万博では、多彩な展示により未来の社会を垣間見ることができます。今回は、五感、とりわけ視覚と触覚を使って楽しめる最新技術をご紹介します。非接触技術やホログラム演出などの革新的な技術は来場者の体験価値を高めるだけでなく、利便性や衛生面の進化にも貢献するものです。注目したい展示とともに、こうした技術の社会実装に向けた取り組みを解説します。
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2025年4月に開幕したEXPO 2025 大阪・関西万博では、多彩な展示により未来の社会を垣間見ることができます。今回は、五感、とりわけ視覚と触覚を使って楽しめる最新技術をご紹介します。非接触技術やホログラム演出などの革新的な技術は来場者の体験価値を高めるだけでなく、利便性や衛生面の進化にも貢献するものです。注目したい展示とともに、こうした技術の社会実装に向けた取り組みを解説します。
EXPO 2025 大阪・関西万博には、さまざまな最新技術が世界中から集結しています。各国のパビリオンではインタラクティブな仕掛けを取り入れ、エンターテインメントと先端技術を融合した展示を行っており、来場者は未来をより便利に・豊かにする先進的なテクノロジーを体験できます。
そのなかでも目を引くのは、特殊なディスプレイやホログラフィ技術を用いた立体的な映像演出です。
たとえば、日本のある企業により行われた実証実験では、1970年に万博が開催された吹田市と、大阪・関西万博会場の夢洲(ゆめしま)を高速・大容量通信でつないだリアルタイム伝送が行われました。低遅延の伝送技術を使い、センサを装着したアーティストが吹田市で行ったパフォーマンスを、約20km離れた大阪・関西万博会場に3D映像として映し出します。この振動も再現され、来場者はまるで目の前で見ているような感覚でアーティストの臨場感あふれるライブを楽しみ、時間と空間を超えて感覚を共有するという体験ができます。
別のパビリオンでは、有名寿司店の大将がそこにいるかのように透過型ディスプレイに投影され、寿司を握っている姿を見ることができます。さらに三重県の展示エリアでは音や香りを駆使し、まるで熊野古道を歩いているような感覚が味わえる映像が流されました。
たくさんのLEDロッド(棒)を吊るして立体的な映像を映し出したり、3Dに見える映像を巨大な半球型のディスプレイに投影したり、ただ見るだけではない没入感のある映像を楽しめる次世代の技術が数多く展示されています。
コロナ禍以降、注目が集まる非接触技術も、万博で体感できる最新テクノロジーのひとつです。来場者の移動手段として運行しているEVバスは、非接触、つまりワイヤレスで充電されています。地面の一部に埋め込まれた送電コイルの上をバスが走ったり停車するたびに少しずつ給電されたりしていく仕組みです。
いくつかのパビリオンでは、触っていないのに触れた感覚を得られる「空中ハプティクス」と呼ばれる触覚伝達技術を体験できます。ある日本企業は非接触でドアノブに触れたことを感じる未来のドアノブを展示しました。3DセンサとAIで体験者の身長を非接触で測定し、3Dホログラフィ技術で仮想ドアノブを投影。さらに空中超音波を使って、ドアノブを掴む感覚を再現します。
またある医療機器メーカーは3D技術を駆使して、未来の手術を体験できる展示を行っています。来場者は設置されているコントローラーを操作して、本当に血管にワイヤーを通しているかのような体験を味わえます。
さらに、別の企業が展示している「空中感覚装置」では、映像が浮かんだ装置の中に手を入れると、泡がはじけたような触感や雨に打たれている感覚を体験できます。これは装置の中にある複数のカメラが手の位置を認識し、手に超音波を当てることで、何かに触れている感覚を再現しているのだとか。
私たちの身体感覚を拡張する、進化したテクノロジーを体感できるのです。
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こうした技術が社会に実装化される日は近いのでしょうか。
ワイヤレス充電や、カードやスマホを決済端末にかざすだけで会計が完了するタッチ決済などで非接触技術はすっかりおなじみになりました。関西万博でも、ブロックチェーンのWEB3を用いたデジタルウォレットが採用され、キャッシュレス推進に一役買っています。
しかし、SF映画のようなホログラム、空中に浮かぶ3D映像の実現には、膨大なデータ処理や高速通信が必要だとされており、実現はもう少し先、6G時代や2030年以降と予測されています。
特殊なレンズやスクリーン、LED、ミラーガラスなどを使った疑似ホログラムはすでに開発されており、サイネージ、商品紹介パネルなどで使われています。またAR/VRによってホログラム的な仮想の立体映像を作り出す技術も、すでに教育・医療をはじめ、さまざまな分野で活用されています。
たとえば、都内のある書店には既存のシステムにホログラムフィルムやセンサーなどを後付けして設置できる非接触タイプのタッチパネルが導入されています。利用者がモニターに手を触れることなく、空中に浮かんで見える画面を操作して書籍の検索ができるため、タッチパネルの課題である衛生面の問題を解決するほか、手袋をしたままの操作や濡れた手での操作も可能です。
振動や圧力などをデジタルで感じられる「空中ハプティクス(超音波ハプティクス)」の研究開発はさらに進んでいます。
ハプティクス技術は、AR/VR、医療などの分野への導入が期待されていますが、特に自動車への搭載が間近とみられています。これが実現すれば、仮想ボタンをタッチしてエアコンやオーディオのコントロールができるようになるかもしれません。より正確に・衛生的に機器を操作できるようになり、利便性や安全性は大きく向上するでしょう。
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ホログラムや非接触タッチパネルは、利便性・防犯・医療・衛生など、さまざまな分野での活用が見込まれています。公共施設など日常の中で利用が進む一方、エンタメや通信、量子技術とも結びつき、その可能性は広がっています。万博で体験できるこれらの技術は、私たちの生活や価値観を今後大きく変え、より便利で豊かなものにしていくでしょう。
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※大阪・関西万博、EXPO 2025は公益社団法人2025年日本国際博覧会協会の登録商標です。
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