かつて「痛い趣味」と揶揄された痛車。しかし今、そのカルチャーは目を見張る進化を遂げています。SUPER GTさながらのデザインや3Dスキャンなどの最先端ラッピング技術、さらにVTuberブームに伴う車内のガジェット化。四輪の痛車にとどまらず、痛バイク(痛単車)や痛チャリ(痛自転車)も含め、大人心を刺激する要素満載の趣味へと変貌しました。
日本独自のオタクカルチャーとして世界的に広がる痛車文化。本記事では、独自のハイテク進化を遂げた「今どきの痛車トレンド」と、その熱狂を体感できる“聖地”をご紹介します。
今さら言うまでもありませんが、痛車とはアニメ・ゲームのキャラクターやロゴなどで装飾されたクルマです。クルマだけでなくバイクや自転車が痛車仕様に装飾されることもあり、その場合は、痛単車・痛チャリと呼ばれたりします。
痛車自体はかなり以前から存在していたようですが、全国的に知られるようになったのは20年ほど前のようです。初期の痛車には、オーナー自らカッターを駆使し、単色のマーキングフィルム(カッティングシート)を「手切り」して仕上げるなど、DIY精神にあふれた作品も多く見られました。推しを車体にリアルに再現するには、当然ながら何色ものシートをパーツごとに切り分け、重ね、つなぎ、貼っていく必要があるわけで、技術と集中力、そしておそろしく時間のかかる、気の遠くなるような作業だったのです。
しかしこの20年ほどでカルチャーは激変します。カッティングマシンや、フルカラーで印刷できる大型インクジェットプリンターが身近になり、インターネットで情報や素材を共有できるようになったことで、痛車の数も質も大幅に上がりました。痛車文化の広まりを受け、公式が痛車向けのガイドラインや素材を用意したり、専門店が版権元と正式にライセンス契約を結んで痛車用グラフィックを販売したりする例も増えています。
今の痛車は「痛い」どころか、市民権を得た「大人のクリエイティブな趣味」へと進化しました。この痛車の歩みは、日本のオタク文化の歴史そのものと言えるかもしれません。
現代の痛車は単にキャラクターを貼るという領域を遥かに超えています。そのベースにあるのは、SUPER GTのレーシングカーなどを彷彿とさせる、スポーティな「バイナルグラフィック(流線型の車体装飾)」です。キャラクターのイラストを、クルマのデザインに関係なく単にドン!と貼るのではなく、流れるようなデザインの中にキャラクターを違和感なく溶け込ませた、より洗練されたデザインが増えています。
メジャーと型紙で実寸を取って行われていたこの複雑な作業を、より容易に、より正確にしたのが3Dスキャンです。実車を3Dスキャンしてデータ化し、フェンダーの膨らみやドアノブの凹凸などの曲面を考慮した上でデザインを作れば、流線形のラインやキャラクターの顔の歪みを抑え、車体にぴったりフィットさせやすくなるというわけです。
さらに「メタリック」「マット(艶消し)」「クローム(鏡面)」などさまざまな特殊素材が登場し、光の当たり方で表情が変わる、立体的な質感を出せるようになりました。
なお「バイナルグラフィック」は、「塩化ビニール(Vinyl)」のシートを使った車体グラフィックのことで、海外のレーシングカーやカスタムカーの装飾として広まりました。現代の痛車は、海外発の「バイナル」をベースに、日本の「キャラクター」、そして最新の「ラッピング技術」を掛け合わせた、和洋折衷のハイテク・カスタムへと変貌しているのです。
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痛車に描かれるキャラクターも変わりつつあります。かつてのアニメ・美少女ゲーム中心の時代から、現在の痛車トレンドを牽引するのは「VTuber」や「スマホゲーム」のキャラクターたちです。毎日のように配信が行われ、日々会うことのできるVTuberやスマホゲームのキャラが主流になったことで、以前より若い世代や、クルマの改造自体にはそれほど興味がなかった「推し活層」も痛車に興味を持つようになっているようです。
さらにデジタルな存在が対象になったことで、車内カスタムのガジェット化も進んでいます。ダッシュボードに液晶モニターを埋め込み、停車中に推しの配信を楽しむ。音声ナビの声を推しの声に変更する。LEDイルミネーションを推しのイメージカラーに連動させる。クルマ全体を推しと過ごせる空間に仕上げることがトレンドになっています。
実体を持たないデジタルな存在だからこそ、よりリアルなモノを作り上げて、推しの魂を宿らせる。そんな新たな推し活スタイルが痛車界隈にも普及しているわけですね。
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またVTuberやスマホゲームには国内はもとより、世界中にファンがいます。オーナーが痛車の写真をSNSにアップすると世界中から反応が来る時代です。ファンアートの拡散とも連動し、痛車は国内外のファンと繋がるためのアイテム、令和ならではのコミュニティを形成するアイテムという役割も果たしているのです。
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