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塗装じゃないのよ痛車は!フロントガラスは厳禁!痛車ステッカーの秘密と作法

2022.12.27

オーナーの愛と情熱が詰まった「痛車」。車体を華麗に彩るその絵柄は、いったいどのように制作されているのでしょうか。そして痛車を作るうえで注意すべきこととは?痛車の歴史とこだわり、さらにはクリアすべき問題など、知られざる痛車の「作法」をご紹介します。

痛車は走る立体アート。オーナーの情熱溢れるデザインに唸る!

アニメや漫画、ゲームに登場するキャラクターなどのデザインを、車体いっぱいにデコレーションした車。これがいわゆる「痛車(いたしゃ)」と呼ばれるクルマですが、遭遇した時のインパクトは絶大!思わず振り返り、二度見した……という方も多いのでは。

好きな作品や好きなキャラクター、「推し」への愛をこれでもかとばかりに叫ぶ痛車の登場は1990年頃ですが、ブームに火が付いたのは2000年に入ってから。いわゆる「オタク」文化の人気と認知度が上がるにつれて痛車は増加。痛車が集合するイベントも開催されるようになり、痛車仕様のレーシングカーが世界有数のカーレースに参戦、さらには町おこしや地域PRの目的で公用車や公共交通機関に「痛い」ラッピングが施されることもあるほどの勢いでした。

こうしたインパクトのある痛車はどのように作られているのでしょうか?実は、あの目をひくデコレーションの多くは塗装ではなく、キャラクターを印刷したカッティングシートを貼りつけて作られています。インターネットの普及によって「推し」の画像が手に入りやすくなり、フィルムやシートの入手も容易になったことも手伝って、ついには痛車を自作する人まで登場。こうした状況を受けて痛車のバリエーションも豊富になってきました。

ちなみに、「痛車」の「痛い」は「見ていて何だか気恥ずかしい、いたたまれない」という意味のイタイ。スタイリッシュなイタリア車を指す「イタ車」にも引っかけられた、推しへの愛と自虐がこもったネーミングなんですね。

フロントガラスは厳禁!法律を守って華麗にフルラッピング

痛車

痛車の制作に当たっては、いくつかの法律を確認しなければなりません。まずは、著作権・商標権に関わるものです。車にステッカーを貼ること自体は問題ありませんが、問題になるのは、ステッカーを「作る」こと。著作権法21条には「著作者は、その著作物を複製する権利を専有する」とあります。言い換えれば、これは著作者ではない人がその著作物を複製することを禁止する法律です。ステッカー作りはこの「他者による複製」に当たります。罰則として「10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金」などが定められており、損害賠償など民事上の請求が行われる可能性も。

では、痛車用のステッカーを作りたい時はどうすればよいのでしょうか。ステッカー制作の専門業者に依頼する場合、業者によっては著作権に関する許諾を取っている旨がサイトに記載されています。一方、許諾取得が依頼主に任せられているケースでは、著作権者の意向を自分で確認しなければなりません。作品・作者のWEBサイト、あるいは「絵師」と呼ばれるイラスト制作者のSNSなどに、ガイドラインや注意書きが記載されていることもあります。たとえば、ユピテルのオリジナルキャラクターユニット「羽衣6」の著作権転載に関するガイドラインはこちらのページに記載されています。また、芸能人などをモデルにする場合は、肖像権も絡んでくるため、さらに注意が必要です。他にも、イベントなどの宣伝を目的とした痛車の場合は、都道府県や市町村で定められている広告に関する条例の確認も必要です。

さらに、道路運送車両の保安基準をクリアするため、フロントガラスと前席側面ガラスへのデコレーションはNG。公序良俗に反するステッカーも、刑法175条わいせつ物頒布等の罪で取り締まりの対象となり、懲役もしくは罰金が科せられます。

こうした問題をクリアして完成した痛車ですが、保険や車検は通るの?という疑問が出てくるかもしれません。結論から言うと、派手なラッピングをしていても車検は通りますし、保険に加入することもできます。ただし、事故などで損傷した場合、ラッピングは装飾品扱いとされ、保険の補償対象となるかはケース・バイ・ケースのようです。

こだわりの詰まった痛車のステッカー。デザイン力が試される!

痛車

車体のどの部分にキャラクターを配置するかという「ポジショニング」、貼り合わせの位置調整など、痛車には一見して分かりにくい技術も詰まっています。痛車制作の過程は、デザイン制作・ステッカー製作・施工と、大きく三段階に分かれています。しかし、車は曲面で構成されているため、デザインするにも完成したシートを貼るにも相応のスキルが必要。特に1メートルを超えるような大きなシートでは、キャラクターの顔などの大事な部分がボディの境目にかからず、より「映える」ようにデザインし、それを美しく貼るという高度なスキルが要求されます。かといって、デザインから施工までのフルラッピングを専門業者に依頼すると、やはり費用がかさみます。どこまでの工程を自分でやり、どこからプロに依頼するかという問題は、オーナーさんの大きな悩みとなっています。

痛車のこだわりはラッピングだけではありません。多くのオーナーさんは内装もラッピングに合わせてデコレーションしたり、ナンバープレートを推しの誕生日や作品の記念日にしたり、色々なトータルコーディネートを楽しんでいます。お手入れも痛車を美しくキープするためには重要なポイントです。ボディカバーを付け、鳥の糞や虫はこまめに取り除き、洗車はもちろん手洗いで。こうした日頃のケアが、こだわりの痛車をいっそう輝かせます。

そんな痛車をもし街で見かけたら、写真を撮ってもよいのでしょうか。声をかければ、多くのオーナーさんは快く自慢の愛車を撮らせてくれるでしょう。もちろん写真をSNSなどに投稿したい場合は、事前に掲載の許可を取るのがマナーです。投稿の許可を得られても、ナンバーや背景をぼかす、オーナーさんや同乗者さんは写さない、などの配慮を忘れずに!

知られざる痛車ステッカーの世界。塗装じゃないのよ痛車は!

公道を颯爽と走り、多くの人の目をくぎ付けにする痛車。それは日本のオタク文化における究極の形と言って良いかもしれません。何を、どこに、どうデザインするか。オーナーさんの推しに対する愛と情熱、そして費用が、痛車にはぎゅぎゅっと詰め込まれているのです。

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【執筆】ユピスタ編集部
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