ユピテルが提案する、ライフスタイルを豊かにする情報コラム

さまざまな制約から解放され、自由なコミュニケーションが楽しめるオンライン空間「メタバース」。アプリも話題になる中、オンライン空間で自分の代わりとなる「アバター」にも注目が集まっています。誰でも参加できるアバターの世界と、近年話題となったアバターがもたらす意外な効果とは？　すぐそこまで来た、新しいコミュニケーションの可能性をご紹介します。

「アバター」という単語、2009年に大ヒットした同名の映画で初めて知ったという方も多いのではないでしょうか。アバターとは、サンスクリット語で「化身」を表す「アヴァターラ（avataara）」が語源。インターネットの世界では、自分の「分身」として動かすことのできるキャラクターを指して使われています。プロフィール写真などと異なり、多くのアバターは3Ｄデータ。私たちはアバターを通して、オンライン空間の中で動いたり、喋ったり、働きながら、他の人とコミュニケーションを取ることができます。

アバターは簡単に作成することができます。最近では、写真やイラストをもとに、自分そっくりのアバターを自動生成できるスマホアプリも人気です。既存のパーツを組み合わせることによって、好みのアバターを作り上げることもできます。Webサイトで販売されているアバターを購入し、服装や髪型などを変更して使用する方法もあります。多くのアバターは人間のカタチを取っていますが、動物やキャラクターのアバターを好む人もいます。いずれにしても、アバターはなりたい自分、理想の自分になれるという自由さが大きな魅力です。

アバターの制作に関しては、ゼロスタートで自ら3Dモデルのキャラクターを制作し、アプリ上で動かしている人もいます。以前からご紹介しているVTuberがそれです。3Dモデルは手足を自由に動かせることが最大の魅力。今では、自分の満足のゆくアバターを制作してくれるクリエイターもいます。また、従来はコンテンツ（サービス）毎にアバターを作成する必要がありましたが、すでにさまざまなコンテンツで使用できるアバターを制作するソフトも存在しています。AvatarMaker、VRoid Studio、TheSandboxなど、それぞれ推奨のメタバース環境で共通して使えるアバターが作成できるようになりました。

通信技術の進歩に伴い、アバターが活躍するシーンも多岐にわたるようになりました。まずはお馴染み、エンターテインメントの世界。多くのRPGでは、それぞれの衣装や武器で身を固めたアバターたちが交流しています。アニメやゲームの人気キャラクター、VTuber、また実在のアイドルがアバターとして登場するxR空間でのイベントも開催されています。そうしたバーチャルコンサートは世界中で数千万人が視聴しています。SNSの世界でもアバターは活躍しており、特に人気が高いのがアバターを使ったVRチャット。アバター同士なら、国籍も性別も年齢も関係ありません。

アバターは、ビジネスの分野でも欠かせないものになりつつあります。近年はコロナ禍もあり、多くの企業がweb会議や遠隔での取引に力を入れるようになりました。日本の企業により100万人規模で開催されたVRマーケットが既に話題となっています。こうした事業において顔を見て話せるアバターは、よりスムーズなコミュニケーションの実現に役立っています。興味深いところでは、「通常のweb会議ツールよりもアバターの方が発言しやすい」、「普段言えないことも気軽に発言できた」という調査結果もあります。

顔の見えないコミュニケーションを、より自由に、より円滑に進めることに役立つアバターですが、近年、アバターにはさらに大きな効果があることが明らかとなりました。それが「プロテウス効果」です。

「プロテウス効果」とは、「アバターの見た目がユーザーの行動に影響を与える」という不思議な心理効果を指します。例えば、科学者・アインシュタインのアバターを使ったユーザーは認知能力が向上し、マッチョなアバターを使うユーザーは重い物を持った時に軽く感じ、容姿の美しいアバターを使っていると積極的に人に話しかけられるようになる。こうした効果は、すでにいくつもの実験で裏付けられています。

さらに、アバターは他者の視点を経験し、他の人への理解や思いやりを深めることに役立つという効果もあります。スーパーヒーローのアバターを使用していると正義感や人助けの心が向上したり、黒人のアバターを使っている白人は差別意識が低下するといった効果があったということは驚きです。

「プロテウス」とは、自在に姿を変えられるギリシャ神話の海の神。自由に姿を変えられるアバターは、リアルな私たちを変える力さえ持っているのかもしれません。オンラインでのコミュニケーションが当たり前になった今、メタバースでの活動は大きな割合を持つようになりました。近い将来、アバターはさまざまな制約から私たちを自由にし、本当になりたい自分になれる後押しをしてくれるのかもしれません。

メタバースアプリをはじめ、オンラインの仮想空間は、ゲーム好きの人だけではなく、さまざまなタイプの個人やたくさんの企業が参加する「新しい生活空間」となりつつあります。次第に現実世界に大きな影響を与えるであろうアバターたち。自由で新しいコミュニケーションが、今、目の前に開かれています。