ADAS(先進運転支援システム)は、あおり運転や高齢ドライバーの危険な運転を未然に防ぐ次世代の自動車技術として注目されています。この記事では、ADASの意義を分かりやすく解説し、より安全なクルマ社会の実現に向けた通信テクノロジーを紹介します。
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ADAS(先進運転支援システム)は、あおり運転や高齢ドライバーの危険な運転を未然に防ぐ次世代の自動車技術として注目されています。この記事では、ADASの意義を分かりやすく解説し、より安全なクルマ社会の実現に向けた通信テクノロジーを紹介します。
近年、自動運転のテクノロジーはめざましく進化し、私たちのモビリティを変えようとしています。このような動向から生まれた技術が、自動車の動きを制御して運転を支援する「ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems)です。日本語では「先進運転支援システム」と訳されています。
自動運転(AD、Autonomous Driving)は、ドライバーがハンドルを握らなくても自動的に目的地まで運転してくれるものですが、ADASはあくまでもセンサーやカメラなどを使った、ドライバーのサポート機能です。運転の責任がドライバーにある点において、自動運転と異なります。
国土交通省では、ドライバーとシステムの関わり方から自動運転を5つのレベルに分けて説明しています。レベルが高くなるほどドライバーの操作が少なくなっていきます。
このうち、レベル1の「運転支援」、レベル2の「特定条件下での自動運転機能・自動運転機能の高機能化」を担うのがADASです。レベル1はシステムが前後・左右いずれかの動きの制御を行うもので、障害物を見分けて自動で止まったり、前の車について走ったり、車線からのはみだしを防止したりなどがこれにあたります。レベル2はレベル1の動きの組み合わせを指し、車線に沿って走りながら、前の車に追従して走る、といったものが該当します。
日本では2021年11月以降に発売する国産車(輸入車は2024年7月以降)にADAS装備が義務付けられています。
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運転は「認知」「判断」「操作」の3つが重要です。この3つの要素から、高齢ドライバーやあおり運転の問題にフォーカスして、あらためてADASの代表的な機能をピックアップしていきましょう。
まず、「認知」をサポートする機能を紹介します。
運転時に最も確認が必要になる対象は歩行者です。視認性の悪い夕暮れ時には、昼間のおよそ4倍もの事故が発生するといわれています。夜間や悪天候時にも注意が必要です。ADASでは、赤外線カメラによる「ナイトビジョン/歩行者検知(NV/PD)」により、ドライバーを支援します。また、最高速度や一時停止などの標識を認識する「道路標識認識(TSR)」といった機能もあります。
次に、「判断」に関する機能です。
交通事故総合分析センター(イタルダ)が公開している2018〜2020年の統計によると、アクセルとブレーキの踏み間違いが原因で発生した死亡重症事故のドライバーは、75歳以上の高齢者が多数を占めていたことがわかります。こういった事故を防ぐには、ペダルの踏み間違いを抑制するだけでなく、ブレーキを踏むタイミングの支援も重要です。ADASでは、「前方衝突警告システム(FCW)」により、前方を走る車両と追突の危険性が高まると、警告や回避の操作を促します。警告があってもブレーキ操作がなかった場合には、「衝突被害軽減システム(AEBS)で、自動的にブレーキを作動させます。
最後に、「操作」を支援する機能です。
アクセルペダルを踏み続けなくても一定の速度を維持する「車間距離制御装置(ACC)」、車線からはみ出したときに警告する「車線逸脱警報警告(LDW)」、車線を維持する「車線逸脱防止支援システム(LKAS)」などがあります。警告に従わなかった場合は、ドライバーを強力にアシストする機能が作動し、段階的に支援する点がADASの特徴です。
あおり運転の防止には「ドライバーモニタリング(DM)」が重要といえるでしょう。車両が不自然な動きをしたとき、ADASによって警告を出し、場合によっては車両を停止させます。車両だけでなく運転者の表情、携帯電話の操作や飲食などの運転中の行動を監視することで、あらゆる危険の回避が考えられます。
もともとADASがない車に乗っている方でも、ドライブレコーダーなどのADASを搭載した車載機器を活用すれば、こういった安全運転支援機能の恩恵を受けることができます。
ネットワークを通じて自動車が多様なデータとつながることにより、より安全で快適なクルマ社会の実現が期待されます。ADASの進化において重視される先端技術のひとつが「V2X通信」です。V2Xは「Vehicle to X」であり、Xはさまざまなものを示します。
V2V(Vehicle to Vehicle)は、自動車同士がそれぞれに検知した障害物や路面状況などの情報を交換する技術です。肉眼では見えない曲がり角の先の自動車や歩行者の位置をこの技術によって事前に把握できれば、見通しの悪い交差点や信号のない場所などでの出会いがしらの衝突を避けることができるでしょう。
また、歩行者のスマートフォンやタブレットとつながるV2P(Vehicle to Pedestrian)は、歩行者の位置情報を自動車に伝える技術です。右左折の際、死角に歩行者がいることをドライバーが知っていれば、巻き込み事故のリスクを低減することができます。
クラウド上にあるインフラやネットワークの情報と接続するV2I(Vehicle to Infrastructure)やV2N(Vehicle to Network)では、渋滞を回避して空いているEVの充電スタンドを探すようなことにも役立ちます。V2X通信の拡充とADASにより、よりよいクルマ社会の未来が期待できます。
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自動運転が実現しつつある一方で、愛車を運転することそのものを楽しんでいる人にとっては複雑な心境かもしれません。ADASは人々から運転の楽しみを奪うことなく、テクノロジーと人間の共存をめざします。もちろん、ADASがあるからと慢心せず、運転に集中することも大切です。これからも安全運転の支援にとどまらず、快適な社会の実現に向けて技術開発が進んでいくことでしょう。
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