デジタルイラストを制作する時に欠かせないツールと言えば、すぐに思いつくのがペンタブと呼ばれるパッドタイプの端末です。板タブやペンタブ、液タブなど、いろいろな名で呼ばれるこれらの機器には、それぞれどんな特徴があるのでしょうか。一般的なタブレット型携帯端末との違いは?イラスト制作やデザインのプロだけでなく、実は一般のビジネスシーンでも活用できるペンタブレットの基本について解説します。
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デジタルイラストを制作する時に欠かせないツールと言えば、すぐに思いつくのがペンタブと呼ばれるパッドタイプの端末です。板タブやペンタブ、液タブなど、いろいろな名で呼ばれるこれらの機器には、それぞれどんな特徴があるのでしょうか。一般的なタブレット型携帯端末との違いは?イラスト制作やデザインのプロだけでなく、実は一般のビジネスシーンでも活用できるペンタブレットの基本について解説します。
パソコンに接続して専用のペンを使用する板タブは、画面上にイラストや図を描くための専用ガジェットです。後述する液晶タブレット(液タブ)との差別化を図るため、「ペンタブ=板タブ」を指すことも多いようです。
板タブの「板」に当たる四角い部分はパソコンの画面とリンクしていて、専用のペンで描いたものがパソコンの画面に表示されます。タブレット上には何も表示されず、黒い板(黒くない機種も)のまま。ちょうどマウスとマウスパッドのような関係と考えることができます。
このペンタブ、趣味や仕事で絵を描く人の役に立つだけでなく、ビジネスシーンでも活躍します。文書や表計算アプリなどの資料に書き込みを入れたり、大事な部分にマーカーを引いたりしたい場合、通常はコメント機能やテキストボックスを使いますよね。そうした機能は立ち上げる際にちょっとした操作が必要で手間がかかりますが、ペンタブならそれらの手順を飛び越えて簡単に手書きの修正が加えられます。
また、板タブには比較的安価というメリットがあり、1万円以下の手頃なものも販売されています。条件を満たしていれば、スマホと接続して使うことも可能です。さらに、板タブを使う時は顔を上げてパソコンの画面を見るので、長時間使用しても姿勢が悪くなりにくいというメリットも。ただ、ペン先と描いたものがダイレクトに対応していないので、初めて使う人は慣れるまで少々時間がかかるかもしれません。
液晶タブレット(液タブ)は板タブと異なり、描いた絵がパソコンの画面だけでなく、タブレット上にも表示されます。基本的には板タブと同じくパソコンに接続して使用しますが、タブレット自体にOSを搭載したものも登場してきました。
液タブのメリットは紙に描くのと同じ感覚で絵が描けることです。描いたものがそのままタブレットの画面上に反映されるので、描き損じが減って効率的に作業を進めることができます。
液タブも板タブと同じく、テキストや画像データに手書きの修正やコメントを入れる時などのビジネスシーンでも活用できます。液晶が搭載されているのでデュアルモニターの拡張ディスプレイとしても使用可能。オンライン会議などではホワイトボードの役割を果たし、複数人で画面を見ながら書類をブラッシュアップする際やテレワークで使うツールとしても重宝するなど、仕事や作業のジャンルを越えた活躍が期待できるのも大きな魅力です。
ただ、液タブは板タブより価格が高く、相場は5万〜10万円程度と値が張ります。また、重さもあって場所を取り、描く時はうつむき加減の姿勢になるため、長時間使い続けると肩が凝って疲れるという人も。そのため、専用のスタンドなどを使って斜め置きにする人が多いのですが、そうするとさらに広いスペースが必要となるかもしれません。
なお、タブレット型の携帯端末などにイラスト用のソフトをインストールすれば、液タブとほぼ同じように使用することができます。ただし、液タブに比べて搭載機能は少ないですし、処理速度や画面のサイズ、バッテリーなどの課題もあります。
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板タブと液タブにはそれぞれにメリット、デメリットがありますが、タブレットで何がしたいのか、使用頻度などを考えれば、ぴったりのペンタブレットが見つかるでしょう。
初めてペンタブレットを使う、初めてデジタルイラストに挑戦するなら、やはり液タブが便利です。慣れるまでの時間もあまりかからないので、せっかく購入したのに使いこなせず、文字通りただの「板」になってしまう…ということを避けられます。
一方、あまりお金をかけずにペンタブレットを導入したい、練習する時間は十分とれるという人には板タブがおすすめかもしれません。また、パソコンを持っていないけれどデジタルお絵描きを楽しみたい、手書きの修正や書き込みをやってみたいという人なら、ちょっと大きめのタブレット型携帯端末を購入すれば、インターネットや動画視聴、ゲームなどと併せて楽しむこともできます。
どのタイプを導入するにしても、それぞれのデバイスが使いたいアプリに対応しているか、アプリに必要な動作環境、接続するパソコンのスペックやストレージの空き容量もチェックが必要です。
さらに、ペンタブレットの描きやすさを左右する要素として挙げられるのが「筆圧レベル」と「傾き検知機能」です。これはペンにかかる力やペンの傾きを検知する精度のことで、数値が高ければ実際の鉛筆やペンと同じく、力の入れ加減で太さや濃淡を自由に描き分けられるようになります。中にはこれらが搭載されていない機種もあるので、必要な機能だと思うなら忘れずに確認しましょう。また、「応答速度」が遅いと描いたものがディスプレイに表示されるまでのラグ(遅延)が気になるかもしれません。
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ペンタブは、プロのイラストレーターだけでなく多様な職種の業務においても役立つガジェットです。絵を描かない方にとっても活用範囲の広いアイテムといえるでしょう。ここではビジネスの現場における具体的な活用シーンをいくつか挙げてみます。
まず個人利用では、あらゆる業務で「メモ」は欠かせません。たとえば、上司からの指示や仕事の手順、企画のアイデアなどを手書きで書き留めておけば、ミスを防ぎ、業務効率や生産性の向上にもつながります。
しかし、紙のメモはどうしても紛失しやすく、必要な情報をすぐに探し出すのは難しいものです。ペンタブを使えば、手書きのメモをデジタルデータとして保存できるため、タグ付けやキーワード検索ができ、必要な情報にすぐアクセスできます。OCR機能を活用すれば手書き文字のテキスト変換も可能。配布されたPDFの資料に、注意点や修正をメモする使い方も便利です。
最近ではZoomなどのビデオ会議が一般的になりました。オンライン会議システム上で、ドキュメントの共有やホワイトボード機能を利用する場面も増えています。ホワイトボードで図解を描きたいときがペンタブの出番。マウス操作だけでは文字や図形をきれいに描くのは難しいですが、ペンタブを使えばノートに書き込むような感覚で使うことができます。
また、DXの進展により、契約書や申請書のデジタル化も進んでいます。これまで紙に手書きしていたサインが電子署名へと移行していますが、ペンタブは筆跡とともに筆圧まで感知できるため、本人の特徴をデータとして残せるという利点があります。さらに、紙の書類を持ち運ぶ必要がなくなり、ペーパーレスによるコスト削減にもつながるでしょう。
こうした背景から、銀行や市役所などの窓口業務、病院の同意書サインなどにも活用が広がっています。さらに、学生のオンライン授業や社会人のオンライン研修など、ペンタブの利用シーンはますます拡大しています。
2019年のGIGAスクール構想により、小・中・高等学校の教育現場にもICT導入が進められています。高速ネットワークとともに、1人1台のコンピュータやタブレットを利用できる環境が整備されたことで、教育DXの流れの中、授業のあり方も変化しています。
現在、学校の授業ではタブレットの活用がすっかり定着しています。オンライン授業に限らず、デジタル教科書への書き込みや、手書きの感想をクラス内で共有して話し合うなど、インタラクティブな学習も増えました。パソコンやiPad、Android端末に加えてペンタブを周辺機器として使えば、表現力が広がり、よりクリエイティブな授業を実現できます。
また、子どもの学習の中で、キーボードによるタイピングよりも手書きの方が理解を深めるという研究も報告されています。手書きは脳の活動を活性化し、より長く記憶に残るメリットがあるとも言われています。デジタルでありながら手書きの良さを活かせるペンタブは、学習効果への期待ができるアイテムといえるでしょう。
学校以外でも、ビジネス研修の現場で手書きの効果が注目されています。資料作成時のデザインだけでなく、オンラインセミナーでリアルタイムに手書きの図や注釈を加えれば、講師の意図も受講者にはっきりと伝わります。手書き内容はクラウドに保存され、ファイルの共有も簡単です。メールで共有リンクを送れば、わざわざファイルを添付する手間も省けますし、アクセス制御でセキュリティの面でも安心です。
インサイドセールスなどオンライン特化型の営業活動においても、見込み客(リード)の育成が重視されます。プレゼンテーションの際、ペンタブで要点を明確にマーキングすることで、自社商品やサービスの魅力を伝えやすくなります。
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ペンタブはさまざまな用途に活用できますが、プロのクリエイターとビジネスマン、学生では求められる機能やスペックも異なります。先端技術の導入とともに、細かなイラスト表現のニーズに応える高精細なモデルや、書き心地を追求した製品開発も進んでいます。
現在の液タブには、解像度4K(3840×2160ピクセル)やWQHD(2560×1440ピクセル)クラスの高解像度液晶モデルも見られるようになりました。ディスプレイの方式も、有機EL(OLED)だけでなく、より色再現性の高い量子ドット(QLED)が採用されるケースも増えています。量子ドットディスプレイは、明るく赤・緑・青がより鮮やかに映し出せるのが特長です。表現力の向上により、イラストや文字の細部まではっきり再現できますし、大きな画面で全体を確認しやすいので作業効率アップも期待できます。
クリエイターにかぎらず、ビジネスユーザーや学生でも、やはり書き心地は重視したいところです。筆圧検知や傾き検知、反応速度の向上などで、紙に近い書き心地を目指したモデルが増えています。表面をエッチングガラスやマット加工とすることで滑らかな使い心地や反射防止にも配慮するなど、液タブは今後も進化を続けていきそうです。
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アナログにはアナログの良さがあるとはいえ、今の時代、デジタルで絵を描くことには多くのメリットがあります。また、液タブは資料の修正やホワイトボード代わりになるだけでなく、デュアルモニターやサブディスプレイとしてビジネスシーンでも出番の多いガジェットです。慣れてくれば板タブも液タブも、それぞれの良さを実感できるでしょう。お絵描きライフもオフィスワークも、自分に合ったツールで楽しみたいですね。
(2024年8月19日新規掲載:2025年7月14日更新)
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