2025年は、冬眠するはずの熊が冬になっても出没し、各地で人的被害が相次ぐなど、これまで以上に熊被害が起きた年でした。さらに熊だけでなく、イノシシやアライグマ、ハクビシンなどの野生動物が市街地や住宅街に出没することも増え、それに伴って一般道や高速道路でのロードキル(車が関係する野生動物の死亡事故)も増加しています。
運転中に、熊などの野生動物に遭遇したらどうすればいいのでしょうか。人と車を守り、そして動物も守るために覚えておきたい対処法を解説します。また野生動物との遭遇を減らすために開発されている、通信技術を活用した最新システムもご紹介します。
近年、さまざまな野生動物の出没が問題となっています。アライグマやイノシシ、たぬきやハクビシンなど、全国各地、とりわけ市街地に現れる野生動物に対して、自治体などから注意喚起がなされています。その中で増加が著しいのが熊です。環境省によると、人が熊に襲われる事故の件数は過去最多となり、2025年11月末時点で209件に上っています。そしてこのうち13人が死亡しています。
さらに、一般道や高速道路上で熊が目撃されるケースや自動車と衝突する交通事故も増えています。
2024年には、岩手県内の高速道路で自動車と熊の衝突事故が年間9件発生しましたが、2025年は1月からの10か月間だけで42件にまで増加しました。秋田県でも2025年1月〜10月の自動車と熊の衝突事故は118件で、2024年(23件)の5倍以上となりました。
熊は、例年であれば餌のない寒い時期に冬眠するので、冬に熊に遭遇することはめったにありませんでした。しかし近年では、寒くなっても柿などの食べ物が豊富に残っていて冬眠のスイッチが入らない熊や人の住むエリアで餌をとることを覚えてしまった熊「アーバンベア(都市型クマ)」が増加しており、冬眠しない熊による被害が続いているのです。
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熊をはじめとする動物との交通事故を「ロードキル」と呼びますが、国交省によるとロードキルは例年12万件以上報告されています。熊や鹿、イノシシなどの大型動物と衝突すると車の損傷が大きく、さらに乗っている人にも危険が及びかねません。路上で野生動物と遭遇してしまったらどうすればいいか、対処方法を知っておきましょう。
もし運転中に運悪く野生動物と出会ってしまった場合、窓が開いていたらすぐ閉め、ドアをロックしましょう。後続車や対向車との衝突を避けるためにも急ハンドルや急ブレーキを避け、速度を落として動物の様子を見ながら通り過ぎます。できれば周囲に知らせるために、ハザードランプも点灯させるとよいでしょう。
クラクションやパッシングで追い払おうとしたり急加速で逃げようとしたりするのは、かえって動物を興奮させてしまうため危険とされています。熊は種類にもよりますが時速40km程度で走ることができるので、興奮させないようにゆっくりすり抜けましょう。
では、車と野生動物がぶつかってしまった場合はどうすればよいのでしょうか。ケガをした野生動物が急に動き出す可能性や感染症の問題もあるため、近寄ったり直接触れたりしないように注意が必要です。三角表示板を使用するなどの場合も、野生動物に近づかないようにします。
また、車が動物とぶつかってドライバーや同乗者にケガがない場合はいわゆる「物損事故」となり、これは交通事故にあたります。そして、交通事故を起こしたらドライバーや同乗者には「道路における危険を防止する等必要な措置」をとることや、事故の日時や場所、損壊の程度などの報告義務が発生します。これを怠ることはいわゆる「当て逃げ」に該当しますので、ドライバーや同乗者にケガがなくても車を路肩などに移動し、安全を確保してから警察と道路緊急ダイヤル「#9910」に通報しましょう。
これは他車の衝突など二次被害を避けるうえでも役立ちますし、任意保険を適用して車を修理するためにも必要です。なお、野生動物との事故のケースでは補償の対象外となることもあります。万一に備え、保険の内容をあらかじめ確認しておきましょう。
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熊など野生動物と遭遇した際の対処法を知っておくことは大切ですが、できれば遭遇自体を避けたいところです。ロードキルを防ぐために、インターネットやAIなどを活用したシステムの開発が進められています。
例えば、ミリ波レーダーやセンサーで動物を検知し、路上の回転灯を点灯する仕組みがあるほか、動物の接近情報を車載デバイスから通知するサービスが運用されています。
衝突を未然に防げるよう安全な運転をサポートする仕組みは、ヤンバルクイナなど希少な動物を守る役割も果たしています。
環境省や多くの自治体も、熊やイノシシといった野生動物の目撃情報や被害状況をまとめた熊出没マップやアプリを公開して注意を促しています。さらに、過去の出没状況や気象情報、ブナの実の量などから遭遇リスクをAIで予測するシステムも開発・運用が進んでいます。
また、愛媛県のある企業は、AIカメラと画像認識を組み合わせた熊検知システムを開発しました。カメラが捉えた映像からAIが熊を検知し、SNSを通じて短時間のうちに利用者に情報が配信される仕組みです。このシステムはSIMカードや太陽光パネルを備えており、既存の通信技術や太陽光による自然エネルギーを活用して運用できます。設備の整っていない山間部でも設置が可能なことから、インフラを整備しにくい地域での活用も期待されています。
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ロードキルを未然に防ぐよう、ドライバー自身にもできる基本的な対策があります。熊など野生動物の出没情報があった場所や、「クマ出没注意」など動物警戒区域を記載した標識がある道路、夜行性動物が活動する早朝や夕方の運転には特に細心の注意を払いましょう。ハイビームの使用や普段よりスピードを落とした走行を心がけて早めに遭遇に気付くことで、動物や車、そして大切な人の命を守りながら安全なドライブを楽しみたいですね。
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