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系統用蓄電池とは?電気自動車の使用済みバッテリーで再生可能エネルギーを促進

2026.5.18

「電気代はどこまで上がるの?」「災害で停電したらどうする?」…こうした疑問や不安は、電気が欠かせない私たちの日常生活において、決して小さな問題ではありません。そんな問題を解消するカギとして期待されているのが、巨大なコンテナのように見える「系統用蓄電池」です。この蓄電池に使用済みのEVバッテリーを使うシステムが登場し、再生可能エネルギーの普及を後押ししています。
系統用蓄電池は私たちが電気を利用することにどう影響するのでしょうか。今回は、電気自動車の使用済みバッテリーを、リサイクルして再利用する取り組みと、系統用蓄電池について解説します。

再生可能エネルギーの安定に貢献 系統用蓄電池とは?

系統用蓄電池

私たちにとって蓄電池は身近な存在です。スマホの充電に使うモバイルバッテリーやキャンプのようなアウトドアでも使うポータブル電源、太陽光発電システムで得た電気を貯める据え置き型の家庭用蓄電池というように、目的や用途に応じて蓄電池を利用している方も多いでしょう。

このようなさまざまな蓄電池の中で、規模の大きなものに「系統用蓄電池」があります。家庭に設置する「家庭用蓄電池」や産業施設や病院に設置する「無停電電源装置」と異なり、発電所から家庭までを繋ぐ電力システム全体(電力系統)に接続して利用する蓄電システムを「系統用蓄電池」と呼びます。

この系統用蓄電池は、小規模なもので一般的なテニスコート2面分程度、大規模なものではサッカーコート1面分ほどの広さがあり、「蓄電所」と呼ばれることもあります。なお、一般家庭3000〜4000世帯分の電力の安定化に寄与する1万キロワット(kW)以上の設備では、法的には「発電所」という扱いになります。

では、系統用蓄電池にはどんな役割があるのでしょうか。まず、太陽光などの再生可能エネルギーを、より有効活用するために使われます。再生可能エネルギーは天候に影響されるので時間や日によって発電量がまちまちです。そこで電力が余ったときは、巨大ダムのような役割を蓄電池が果たします。余った電力を蓄え、必要なときに供給して電力需給を安定させるのです。
さらに、系統用蓄電池は電気の需要と供給を秒単位で把握し、「電力ネットワークの調整役」としても機能します。

エネルギー自給率がアップして電力の無駄が減り、ひいては脱炭素社会の実現に貢献するシステムのひとつが系統用蓄電池といえるでしょう。

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電気自動車の使用済みバッテリーを系統用蓄電池に有効活用?!

電気自動車 バッテリー

系統用蓄電池は、リチウムイオンなどの蓄電池ユニット、パワーコンディショナ(PCS)、エネルギー管理システム(EMS)の3つに大別できます。
この蓄電池ユニットに、電気自動車(EV)から取り外された使用済みのEVバッテリーを再利用する取り組みが活発化しています。

使用済みといってもEVバッテリーには新品時の7割程度の蓄電容量が残っているとされています。走行用としては使えなくても、据え置き型の蓄電池としては十分な性能を持っているので、それらをいくつか束ねて系統用蓄電池として再利用(リユース)しようというわけです。このように、最初の製品の目的を終えた後に別の用途を見出してリユースすることを、特に「リパーパス」といいます。

小規模な蓄電所を設置するなら7〜10台分程度、大規模なメガ蓄電所では数百台分のEVバッテリーが必要ですが、すでに大手自動車メーカーでは数社が協力し、数千台分のバッテリーを集めて制御する取り組みが始まっています。

もっとも、EVバッテリーは車ごとに劣化状況や性能が異なります。このようなバッテリー同士をそのまま繋ぐと効率が悪いというデメリットがありましたが、「スイープ技術」という制御システムによって、さまざまなバッテリーが混じっていても容量を使い切れるようになりました。

電気自動車の普及を進めるうえで、廃棄バッテリーが発生することは避けて通れない問題です。これらを再利用してバッテリーの廃棄量を減らしながら系統用蓄電池の設置コストを抑えれば、より環境にやさしいシステムとなるでしょう。

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系統用蓄電池の現状は 民間企業が参入する蓄電所のビジネスモデル

2022年の電気事業法改正によって大規模な系統用蓄電池は「発電所」と定義され、系統用蓄電池をめぐる環境が大きく様変わりしました。

まず、系統用蓄電池の法的な立場がはっきりしたことで、単独の蓄電池でも「発電事業者」として太陽光や風力発電所と同じく、家庭に繋がる電力系統へ接続する権利が保障されました。また、特別措置などが適用されるようになり、コスト負担も軽減されました。

さらにはビジネスの採算性が上がったことで、多くの民間企業が参入し始めています。電気の市場価格が安い時間帯に充電し、高い時間帯に売電して収益を得るなど、新たなビジネスモデルも確立され、市場は拡大しています。「エネルギーの地産地消」となる系統用蓄電池は、災害時に広範囲で電力不足や停電が起こるリスクへの備えとしても機能するため、自治体での導入が進んでいます。国や東京都では数十億円規模の補助金を投入し、普及を後押しするといった動きが加速しています。

もちろん、系統用蓄電池の設置には電力会社との協議、国や自治体とのやり取り、数億円にものぼる費用負担など、クリアしなければならないいくつものハードルが存在します。しかしながら、こうした厳しい認可をとってまでも、収益を上げることは可能です。しかも、系統用蓄電池は脱炭素化への取り組みとして高く評価されているため、企業価値の向上にも役立つでしょう。

高額な初期費用や接続手続きの長期化など今後に向けての課題はあるものの、系統用蓄電池による電力の需要と供給の最適化や災害にも強いレジリエンスは、街づくりに欠かせない存在なのです。

電気代の高騰や災害への備えにも 系統用蓄電池で私たちの暮らしはどう変わる?

系統用蓄電池がうまく機能すると、私たちの生活も大きく変わります。電気代の高騰が抑えられるだけでなく、地域の蓄電池や自宅の電気自動車などがネットワークで繋がることで、家計に還元される仕組みが本格化するかもしれません。また、蓄電所が全国に整備されれば、エリア全体の大規模な停電リスクを防ぐことにも繋がります。系統用蓄電池は、私たちの暮らしや家計を足元から支える頼もしい存在になるでしょう。

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【執筆】ユピスタ編集部
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