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電気自動車vs水素自動車の戦い!Society5.0で10年後どうなる?

2023.5.8

内閣府が提唱する未来社会「Society5.0」の実現に向けて注目されている、環境に優しいクルマ。その代表選手が、電気で走る電気自動車と、水素で走る水素自動車です。それぞれの開発状況は、今どうなっているのでしょうか。2種類の次世代自動車、それぞれのメリットと課題、そしてその未来について解説します。

電気自動車がリード!電気自動車vs水素自動車 実用化の現在地とは

電気自動車は、バッテリーに蓄えた電気でモーターを回転させて走ります。ガソリンを燃焼させないので、走行中にCO2を排出しません。すでに多くの車種が販売されており、選択肢も豊富。価格は250万円からとガソリン車に比べてやや高額ですが、購入時には補助金が出ますし、エコカー減税をはじめとした免税措置も。走行音や揺れも少なく、走れば走るほどガソリン車よりお得。充電を自宅でした場合、5000km走れば年間で2万2500円、1万kmだと4万5000円も割安になるのだそう。さらに、災害や停電時には電気自動車を非常用電源として利用できるので防災面でも活用できます。

一方の水素自動車ですが、実は水素を使って走る車は2種類あります。
まず、エンジン内でガソリンの代わりに水素を爆発燃焼させて走る、いわゆる水素エンジン車。仕組みはガソリン車と同じですが、燃料が水素なのでCO2が発生しません。もうひとつが、空気中の酸素と車に積んだ水素を結合させて発電し、モーターを回す水素燃料電池車(FCV)。水素×酸素なので排出されるのは水だけです。水素がなくなった際は水素ステーションでの充填が必要ですが、3分程度で満タンにできて1回の充填で長い距離を走れるのがメリット。水素の製造は、水を分解する、生ごみなどのバイオマス資源から作るなど、いろいろな方法がある点もポイントです。

ただ、水素エンジン車は現在市販されておらず、FCVも市販車種は数えるほど。国内の大手メーカーは「水素自動車の開発は富士登山に例えると4合目」と述べており、今のところ普及率では電気自動車に及ばないのが現状です。

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利用拡大に向けて解決すべき課題。電気自動車、水素自動車それぞれの課題とは

電気自動車

水素自動車の普及を妨げている原因に、コストの問題があります。例えばガソリンスタンドの建設は7000万円程度ですが、水素ステーションは土地代を別にしても約4億円かかります。維持費も3000〜4000万円と高額。水素を自動車に充填するには資格を持ったスタッフが必要で、ガソリンのように「セルフで」というわけにはいきません。EV充電スタンドが全国に約2万カ所あるのに対し、水素ステーションは180カ所弱(2022年8月時点)。また、水素エンジン車について言えば、CO2を出さない代わりに別の有害な気体を発生させるという実験結果もあります。

FCVの車両価格は最低700万円以上と高額です。上限85万円の補助金があるとはいえ、ガソリン車やEV車に比べればかなり高いですよね。また、水素を貯めておくタンクが大きいので、大型車中心になりがちなのもデメリットです。

普及が進む電気自動車にも課題はあります。まず、充電に時間がかかること。急速充電でも約30分かかるので、ステーションが混んでいれば1時間以上待つことになるかもしれません。また、走行距離もガソリン車より短いので、目的地にたどり着けるかひやひやしながら走ることが増えるかも。加えて電気自動車にはレアメタルが使われるので地下資源の問題もありますし、使用するリチウムイオンのリサイクルコストが高いことも課題です。

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水素が牽引する?Society5.0の実現を目指す社会の変革

電気自動車

日本で排出されるCO2のうち12〜15%が自動車から出ており、環境に優しい車の普及は必須の課題となっています。補助金や助成金などの施策整備も進んでいて、政府は2030年までに水素ステーションを全国900カ所に整備することを計画しています。さらにはFCVも値下げして、普及台数を2025年までに20万台、2030年代までには80万台にすることが目標。燃料電池自動車にプラグイン(差し込み用のアタッチメント)を併用して、電気と水素のどちらも使えるPHEV(プラグイン・ハイブリッドカー)も開発中です。

電気自動車については、自動運転やMaaS(Mobility as a Service=移動サービス)とも相性が良いため、今後はこうした機能もプラスされていくでしょう。将来的にはそれぞれの特性を活かし、EVは小型車、FCVは建設機器や長距離トラックなどの大型車両中心になるのではと考えられています。

ただ、安全かつ効率的なSociety5.0(ソサエティ5.0=現実と仮想空間の一体化で発展と問題解決が両立した社会)の実現を目指すなら車両の開発だけでは不十分。社会全体を構成する多くの分野による連携が必要です。例えばEVにしてもFCVにしても、製造時にはCO2が排出されるため、サプライチェーン全体での取り組みが求められます。あらゆる分野でエネルギーの使用量を抑制するには、運行の最適化が必要となるでしょう。電気や水素などの多様なエネルギーを効率的に使うことが、カーボンニュートラルを実現させるための近道なのかもしれません。

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ゼロエミッションに向けて避けて通れないクルマは切磋琢磨して未来を創る

ゼロエミッション(廃棄物の排出をなくすこと)の実現を考えた時、絶対に避けて通れないのがクルマの進化。今後も電気自動車と水素自動車は切磋琢磨しつつ、カーボンニュートラルを進めるとともに、私たちの未来を創っていくことでしょう。

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【執筆】ユピスタ編集部
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