ユピテルが提案する、ライフスタイルを豊かにする情報コラム

NEW

「エンジン」がないEVの心臓部?車載バッテリーのセル・モジュール・パックとその仕組み

2026.8.17

EVの心臓部であるバッテリーは、1つの電池ではなく「セル・モジュール・パック」という3段階の構造でできています。実物は畳1畳分もの大きさがあり、実際に目にすると誰もがその大きさに驚くほど。EVのバッテリーはなぜこれほど大きくなったのでしょうか。ガソリン車の「燃料タンク」との違いは?

本記事では、EVのバッテリーと身近なモバイルバッテリーとの違いや、最新トレンドである「Cell to Pack(CTP)」技術まで、EVバッテリーの仕組みと安全性の秘密をわかりやすく解説します。

セル→モジュール→パック EVバッテリーの“マトリョーシカ”構造

EVバッテリーマトリョーシカ

EV(電気自動車)のバッテリーは1つの巨大な電池ではなく、実はマトリョーシカのような入れ子式の3段式構造で成り立っています。

そのうち最小単位は、「セル」と呼ばれる単体のバッテリーです。セルの大きさや形はメーカーによって異なりますが、基本的には単一電池〜A4用紙サイズ程度で、形状も円筒型・角型・パウチ型などさまざまです。

この手のひらサイズのセルを数個〜数百個単位でまとめたのが、「モジュール」です。モジュールはバッテリーの温度を一定に保ち、振動や万が一の事故の衝撃などからセルを守る重要な保護ケース&制御装置として働きます。モジュールの大きさは、工具箱〜少し小さめの電子レンジ程度。中に入っているセル数はセルの形やサイズによって変わり、角型など大きめのセルを使えば4〜8個のセルで1モジュールが作れますが、乾電池のような小さなセルを使う場合は1モジュールに300〜400個のセルが詰め込まれます。

そしてこのモジュールをさらに十数個〜数十個集め、車に載せる最終形態にしたものが「パック」です。パックの内部にはモジュールに入った大量のセルが緻密に配置されています。モジュールを介してですが、あるメーカーはパックの中に大きめのセルを約200個並べていますし、別のメーカーは乾電池サイズの小さなセルを約7000個敷き詰めます。ここはそれぞれのメーカーの考え方が表れる面白い部分です。

☆あわせて読みたい
電気自動車vs水素自動車の戦い!Society5.0で10年後どうなる?

燃料タンク×エンジン?!電気自動車の巨大電源「パック」の仕組み

パックの仕組み

1つのパックのサイズは畳1畳分、厚みは30cm、重さは300〜400kg以上にもなります。どうしてこんなにも大きくなったのでしょうか。なぜならパックにはセルやモジュールだけでなく、全体を監視・コントロールする「BMS(バッテリーマネジメントシステム)」も一緒に格納されているからです。

ガソリン車はガソリン(燃料)をタンクに入れ、エンジン(動力)で動かします。それに対してEVのバッテリーパックは、「電気を貯める(ガソリン車でいう燃料タンク)」「クルマを動かすための電力をコントロールする(ガソリン車のエンジン)」という2つの役割を1つで担っています。それらの部品を絶対に壊れない頑丈な金属で覆い、さらに冷却用エアコンも内蔵するため、クルマの床下を占領するほどの巨大パーツになりました。文句なしにEVの中で最も大きく、最もお金のかかっている主役となったのです。

なお私たちが普段使っているモバイルバッテリーは、EV車でいう「セル」を、そのままプラスチックの箱に入れただけのもの。EVは、純粋に電気を出す手のひらサイズの「セル」を、「モジュール」でがっちり守ることで、万が一のトラブルが全体に広がるのを防ぎ、安全性を高めているわけですね。

加えてこの仕組みなら、1つのセルが故障すれば、そのモジュールだけを交換すればよいわけで、修理費を抑えられるというメリットもあります。

最新トレンド モジュールを無くして距離を伸ばす「Cell to Pack」

Cell to Pack

実はいまEV業界では、セルとパックの中間の「モジュール」を完全に無くす、「Cell to Pack(CTP)」という最新技術が主流になりつつあります。モジュールという小分けの箱をなくし、巨大なパックの中に直接セルをぎっしり敷き詰めるわけです。

セルをパックに直接敷き詰めれば、モジュールの仕切りやネジ、配線などが不要になり、パックは軽くなります。空いたスペースにさらに多くのセルを詰め込めるため、バッテリーの容量は15〜30%アップ。結果的に車の重さを変えずに航続距離を伸ばすことができます。モジュールの金属ケースや部品が減れば組み立て工程もシンプルになるため、製造コストは大幅に削減され、EVの価格を下げることにもつながります。

多くのメリットがある「Cell to Pack(CTP)」ですが、実現には、安全性の確保や修理が難しくなるなどのハードルをクリアする必要がありました。モジュールがあれば、万が一1つのセルが発火してもそこで食い止められますが、セル同士が密着しているCTPではそうはいきません。そこで1つの熱が全体に広がらないような断熱や冷却の技術が求められました。またCTPでは1つのセルが故障したらパックごと丸ごと交換になりやすく、修理代が高額になるというリスクもあります。

それでもこれらの課題を高度な技術でクリアし、今やCTPはEVの価格を下げ、航続距離をさらに伸ばす切り札となったのです。

☆あわせて読みたい
急速充電と高速充電の違いとは?充電テクノロジーが開くスマホとEVの未来
電気自動車が手ごろに?充電、ゼロエミッション…拡大する背景と未来は

まとめ:電気自動車の安全を守る床下のバッテリーパッケージング技術

EVバッテリーは、ただ電池を詰め込むだけでなく、セル・モジュール・パックという3段階の構造で徹底的に守られている巨大な装置です。畳1畳分にもなる頑丈な外枠や、パックの中の冷却システム、全体を監視する制御装置は、どれも「絶対に事故を起こさない」ための安全技術の結晶と言えるでしょう。私たちが安心してEVに乗っていられるのは、この床下のパッケージング技術のおかげなのです。

☆あわせて読みたい
全固体電池とリチウムイオン電池はどう違う?自動車の未来は?
次世代電池「ナトリウムイオン電池(SIB)」とは


ユピスタの更新情報をはじめ、ユピテルの最新情報をフォローしよう!
    Yupiteru_ch Yupiteru Yupiteru


【執筆】ユピスタ編集部
ユピスタ (Yupiteru Style) は、ユピテルが運営するテクノロジーやライフスタイルを扱う情報コラムサイトです。日々の暮らしをもっと面白く、もっと安心・安全に過ごすためのさまざまな情報を発信しています。