スマートフォンや電気自動車(EV)に活用される充電技術は、日々進化しています。充電に対応する機器が増え、充電のスピードと容量がより求められるようになりました。この記事では、充電規格とテクノロジーの最新動向、そして私たちの生活に及ぼす影響を考察します。
NEW

NEW
スマートフォンや電気自動車(EV)に活用される充電技術は、日々進化しています。充電に対応する機器が増え、充電のスピードと容量がより求められるようになりました。この記事では、充電規格とテクノロジーの最新動向、そして私たちの生活に及ぼす影響を考察します。
充電器を選ぶときに「急速充電」と「高速充電」の違いについて、疑問を感じたことがありませんか? 実は、急速充電と高速充電に、明確な定義があるとはいえません。しかし、充電速度を高める仕組みを理解するために、充電の仕組みと用途から急速充電と高速充電の2つを分けて解説します。
充電器の性能は、電流のアンペア(A)×電圧のボルト(V)による電力(W)の大きさで示されます。電力は電流と電圧の掛け算のため、電圧または電流を増やすと電力が増加します。つまり、充電器から多くの電力を出力すれば、充電のスピードが上がります。
ここでは電流を増加させて電力の出力を上げる充電器を急速充電、電圧を増加させて電力の出力を上げる充電器を高速充電と呼ぶことにします。
電流を増加させた急速充電器は、スマートフォンやタブレットなどの低電力の端末を、数十分程度の短時間で充電できます。一方で電圧を上げた高速充電器は、ノートPCから電気自動車まで高出力で電力を供給し、すばやく充電します。
ただし、急速充電と高速充電の違いは優劣ではありません。また、先述の通り急速充電や高速充電の名称に明確な定義はありませんので、メーカーによって表記はまちまち。製品の名称や謳い文句にとらわれず、充電の用途や必要な電力によって、最適な規格の充電器を選ぶべきです。
いつでもどこでもすばやくチャージできるように、さまざまな企業が独自規格を展開しています。仕組みに続いて、スマートフォンから電気自動車まで、充電の規格の全体像と最新動向を解説します。いくつかの規格については、目にしたことがあるかもしれません。
USB PD(Power Delivery)は、USBの規格を制定するUSB-IF(USB Implementers Forum)による規格です。USB Type-C端子で安全に急速充電ができ、電力は最大240Wまで供給可能です。PDの拡張規格となるUSB PD-PPS(Programmable Power Supply)は、電流と電圧を小刻みに変更しながら供給するため、端末の状態にあわせて効率的に充電でき、バッテリーの劣化防止に役立ちます。
Quick Chargeは米国のQualcomm社が開発した急速充電の規格です。Quick Charge 3.0のバージョンでは、USB充電の約4倍速いスピードの充電を可能にしました。最新のQuick Charge 5は、100W以上の出力に対応し、バッテリー容量4500mAhのスマートフォンを5分で50パーセント充電できるほどの高速化を実現しています。
電気自動車の急速充電規格は、日本では主にCHAdeMO(チャデモ)規格が普及しています。CHAdeMOは「CHArge de MOve = 動く、進むためのチャージ」、「de = 電気」、「(クルマの充電中に)お茶でも」の3つの意味を含む国産の規格です。北米での主流はテスラ社が開発したNACS(North American Charging Standard)規格であり、日本でも対応充電器の設置が進んでいます。電気自動車もスマホのように手軽に充電できる時代になりました。ひとり乗りの電動モビリティが普及すれば、さらに急速充電のニーズが高まることでしょう。
充電器は、大容量の電力を供給して高速化・急速化を目指す一方で、規格統一や互換性の対応が求められるようになりました。EUでは、2024年の年末からスマホやタブレットなどの充電ポートにUSB Type-Cを採用することが義務化されました。日本では、規制緩和により電気自動車向けの急速充電装置の設置が進んでいます。
このような充電の最新動向を踏まえつつ、安全に利用するために注意しなければならないポイントがあります。まず、充電したい端末、ケーブル、充電器それぞれが対応している規格を確認することが最重要です。規格の合わない充電器は使えません。使えたとしても、端末の故障や破損につながります。次に、ケーブルや充電器は純正品か認証のある信頼性の高い製品を使うべきです。粗悪な製品を使うと、発熱や発火のおそれがあります。端末を充電しながら利用することも、発熱とバッテリー劣化の原因になるため注意が必要です。賢く使うためには、バッテリーの寿命に配慮して、充電80%で自動停止させる機能を使うなどといった工夫も効果的です。
端末がワイヤレス充電に対応しているなら、ケーブルやコネクタを気にすることなく充電できます。また、バッテリーの劣化を防ぐために、リチウムイオン電池の寿命や特性を知っておくと役立つでしょう。
☆あわせて読みたい
・ワイヤレス充電って便利? 置くだけ、くっつく、非接触充電のメリット
・リチウムイオン電池の寿命 スマホや電気自動車のバッテリー劣化を防ぐ
電力は私たちにとって最大のライフラインであり、充電切れは最悪のピンチです。急速充電や高速充電は、充電切れから私たちを救ってくれる便利なテクノロジーといえます。しかし、充電器を利用する際には、用途によって最適なものを選ぶことが大切です。発熱やバッテリーの劣化に注意し、正しい使い方を心がけてくださいね。
※QualcommおよびQuick Charge™は、Qualcomm Incorporatedの登録商標です。
LIFESTYLE
より速い表示速度を目指した4G、同時接続や低遅延がプラスされた5Gと、モバイル通信は進化してきまし...
CULTURE
私たちの生活と切っても切れないものとなったスマートフォン(スマホ)。1台のスマホに2枚のSIMカード...
TECHNOLOGY
携帯電話回線のプラチナバンドの普及が進んでいます。と言っても、スマホを利用する際にどの周波数がどう...