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テクノロジーの未来を握るのはバッテリー?蓄電技術のこれまでとこれから

2024.1.15

スマホ、タブレット、パソコンから車や船に至るまで、その未来はバッテリーにかかっているといっても過言ではありません。容量が大きく、効率が高く、長寿命、安全性、環境配慮…。先進的で、環境に配慮した蓄電技術が日々研究開発されています。一次電池、二次電池といった基本から、バッテリーのこれまでとこれからを考えます。

電池の歴史は250年!「電池」に「池」がついている理由とは

バッテリー

人間が電気を発見したのは今をさかのぼること2500年前。ギリシャの哲学者が「琥珀(コハク)」を擦った時に軽いゴミなどを引き付ける静電気の存在に気づきました。ギリシャ語では琥珀を「エレクトリック」と呼びますが、英語の「エレクトリシティ(electricity=電気)」は、古代ギリシャにおけるこのエピソードに由来します。

しかし、電気の原理が発見されるまでには、そこからの長い年月が必要でした。それは今から250年ほど前のこと。イタリアの生物学者・ガルバーニが、カエルの足に2種類の金属を触れさせ、足の筋肉がぴくぴく動くことを発見します。彼の立てた仮説自体は間違いでしたが、別の物理学者・ボルタが、ガルバーニの使用した2種類の金属に着目し、電流を発生させる装置を作り出しました。世界初の電池が誕生した瞬間です。電池の発明で研究が進み、1800年代にはオームの法則やフレミングの法則、電磁場などの理論が確立され、1897年にはついに電子が発見されます。

漢字の「電池」は、1868年に中国で出版された物理の本に「バッテリー(battery)」の訳語として初登場します。当時のバッテリーは、硫酸を入れた容器を銅線で繋いだものだったので、その容器を表現するために「池」の文字を使ったようです。この仕組みは後に液体がこぼれない乾いた電池、乾電池へと進化します。ちなみに、乾電池を世界で初めて発明したのは、日本人の屋井先蔵。1885年のことでした。

バッテリーと電池は同じもの?一次電池・二次電池の種類と仕組み

バッテリー

現在、電池には約4000もの種類がありますが、主に使用されているものは、化学反応で電気を起こす「化学電池」と、光や熱のエネルギーを電気エネルギーに変換する「物理電池」の2種類です。

化学電池は内部で電解質に溶けやすい金属と溶けにくい金属の間を電子が移動することで電流が発生しています。このうち、一度の化学反応が終わればそれ以上は放電ができなくなる電池を「一次電池」と呼びます。こうした使い捨ての一次電池には私たちが見慣れたマンガン乾電池やアルカリ乾電池、ボタン電池の多くが含まれます。

これに対して充電すると何度も使える化学電池は「二次電池(バッテリー)」と呼ばれます。二次電池は電器にセットすると通常と逆向きの電気が流れ、金属が再生されて内部が元の状態に戻ります。この仕組みを利用することで繰り返し使える二次電池には、スマホなどに搭載されているリチウムイオン電池や、自動車に使用されている鉛蓄電池などがあります。

なお、水素と酸素を結びつけることで電気を発生させるなど、燃料の供給によって電気を発生させる「燃料電池」も化学電池のひとつです。

一方、化学反応を利用しない「物理電池」には、太陽の光エネルギーを電気に変える太陽電池や、放射性物質が出すエネルギーを電気に変える原子力電池などがあります。

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塩1粒サイズの電池や紙電池まで!?環境に優しい、驚きの最新電池技術

カエルの足から始まった電池は進化を続け、現在では驚くような新しい電池が次々と開発されています。

例えばあるバッテリーは、塩1粒程度という超小型サイズ。体内に埋め込まれるシステムの電力を供給する目的で開発されました。また、厚さ1ミリ以下の超薄型バッテリーも誕生しています。ある超薄型太陽電池は非常に柔らかく、アイロンで服に張り付けることもできるそう。わざわざモバイルバッテリーを携帯しなくても、歩きながら洋服からスマホを充電、なんてことも可能になるかもしれません。

スイスの研究チームは、紙とインクを使った紙電池を発明しました。印字部分を濡らすと紙に練りこまれた塩分が溶けて通電するというもので、すでに単三電池と同じレベルの電圧に達しているそうです。素材という点では、金属ではなく樹脂を使った、いわばプラスチック電池も登場しました。加工がしやすく、安全性やコスト面に優れているとして注目されています。

またある電機メーカーは、血液中のブドウ糖を分解して電気を起こすバイオ電池を開発しました。他にも「電気生成菌」と呼ばれる微生物や、植物の光合成を行う仕組みを使った蓄電技術、さらには温度変化で電気を生み出す電池も開発中です。

IoT社会の実現には、街中に1兆個を超えるセンサーが必要になると言われています。こうした需要をまかない、しかも環境に優しい電池は、今後もますます進化していくでしょう。

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センサーが増え、蓄電技術は生活に不可欠なものへ―電池の今昔とこれから

今でさえ私たちの生活に欠かせない電気。将来的にIoT社会の構築が進むにつれ、電池は今以上に必要不可欠なものになっていきます。蓄電技術の進化はこれからも続くに違いありません。便利で環境に優しい、次世代の電池の登場が楽しみですね。


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【執筆】ユピスタ編集部
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