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ロケットまで作り出す!3Dプリンターの進化がとまらない

2021.10.12

プロトタイプを作ったり、部品を作ったり、データさえあれば彫刻のように複雑な造形も見事に作り出してしまう3Dプリンター。立体物を誰もが成形できるという点において革命的なテクノロジーですが、従来はそれこそ、机上に載るくらいの手頃な大きさの立体を作るものとして考えられていました。

しかし現在、3Dプリンターで建物までもが作られているのをご存知でしょうか。さらに驚くことに、3Dプリンターでロケットを製造する計画が進んでいるとのこと。宇宙産業への活用にまで進化している3Dプリンターの最新事情をご紹介します。

3Dプリンターでビルが建つ?変わりゆく3Dプリンターの用途

3Dプリンター

3Dプリンターは、樹脂などを使って数十センチほどの造形物を作るもの、というイメージが一般的です。それが今やその技術を利用して、建築物までもが作られるようになっています。

たとえば、アラブ首長国連邦(UAE)の都市ドバイでは、初の3Dプリンターを使って建築されたオフィスが完成しました。外観も中身もすべて3Dプリンター製のオフィスで仕事をするなんて、まるでドールハウスのようで現実離れしていて素敵ですね。それでも水道や電気、空調設備も備え、しっかりワークスペースとして使用できるようになっており、しかも建設コストは従来の半分というから驚きです。

また2024年にパリで開催される世界的なスポーツの祭典に向けても一つの計画が。パリ市内のある川へ、3Dプリンター製の歩道橋を建てようという事業が進んでいます。この歩道橋は流線型の未来感あふれるデザインとなる予定で、これも複雑な形状を創ることが得意な3Dプリンターならではの発想ですね。

このように建築物に応用されるなど、ますます活用されている3Dプリンターですが、そもそもどのような仕組みで立体的な形状を”プリントアウト”しているのでしょうか。

立体を作り出す3Dプリンターの仕組み

3Dプリンター

立体物を作り出す3Dプリンター。その仕組みは「インク」に相当する原材料を、立体になるよう一層づつ積み上げるように「プリントアウト」していく、というものです。原材料としては樹脂(プラスチック)や金属、カーボンなどの材料が使われます。

また立体化にあたり、その設計図として3Dデータが欠かせません。3Dデータの作成方法には、3DCADソフトで製図する方法や、3Dスキャナーで実物をスキャンするといった方法があります。

また成型の方法も、用途や原材料によって様々。たとえば試作品を製作するプロトタイピングに適しているとされるのがFDM方式(Fused Deposition Modeling)で、現在の主流となっています。これは材料押出法とも呼ばれ、熱で溶かしたプラスチックなどを1層ずつ押し出して積み重ねるように形を作ります。

また模型など、カラーリングが重要な立体を作る際に活用されるのがインクジェット方式です。表面が滑らかで高精細な造形物を作れるのが特徴で、光を当てると硬化する素材を、インクジェットプリンターのように1層ずつプリントアウトします。カラー素材を使えば、あとから塗装する必要がありません。

このほか、金属の粉末をレーザー光線で焼き固める方法もあります。これは鋳型の製造や、最終的に部品としてそのまま使うものを作る場合など、成型物に耐久性が求められる際に用いられます。

ロケットを造る!宇宙で活躍する3Dプリンター

3Dプリンター

3Dプリンターは建築物にとどまらず、ロケットをも作り出そうとしています。しかもこの地球においてではなく、火星の製造工場で行うというから驚きです。

この構想を打ち立てたスタートアップ企業の工場では、金属3Dプリンターによってロケットの部品をプリントアウトしています。この3Dプリンターを使えば、ロケットの製造で必要となる部品の数が従来の100分の1で済むそうです。

また注目すべきはその生産スピードの速さで、ロケットを完成させ発射台に送り出すまでたった60日で済むとのこと。しかもAIが学習をしながら、自動的に精度の高いロケットを量産するようです。このように短期間で製造したロケット、さらには人工衛星が次々と打ち上げられれば、宇宙におけるインフラを構築するのにも役立ちますね。

3Dプリンター製ロケットは当面、火星で採取した試料・サンプルなどを地球に持ち帰るのに用いられると想定されていますが、将来的には、惑星間の輸送や、現地調達の材料のみを使った基地やプラントの建設、はたまた宇宙航行の実現までもが期待されています。3Dプリンターによるロケット製造の発展が、もしかしたら人間の移住計画を現実的なものとしてくれるかもしれませんね。

3Dプリンターは未来の可能性をカタチにする

3Dプリンターは3Dデータと素材さえあればさまざまな造形ができるため重宝されてきましたが、今や建物を作ったり橋を作ったり、使用用途はますますスケールアップしています。さらにはロケットや宇宙基地など、宇宙産業での活用も具体化。人類の可能性を広げるテクノロジーとして今後も目が離せません。

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【執筆】ユピスタ編集部
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