重大な交通事故を招きかねない逆走事故が、日々報道されています。一方で、逆走事故を防ぐための技術も着実に進歩しています。逆走車両を検知し、ドライバーに早期警告を行うことが可能なシステムには、どのようなものがあるのでしょうか。本稿では、逆走事故の原因を考察するとともに、逆走発生リスクを低減するための対策についてご紹介します。
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重大な交通事故を招きかねない逆走事故が、日々報道されています。一方で、逆走事故を防ぐための技術も着実に進歩しています。逆走車両を検知し、ドライバーに早期警告を行うことが可能なシステムには、どのようなものがあるのでしょうか。本稿では、逆走事故の原因を考察するとともに、逆走発生リスクを低減するための対策についてご紹介します。
最近、ニュースで道路の逆走に関する報道をよく目にするようになりました。高速道路や一方通行の道路を含む逆走は、年間約200件発生しているそうです。ただし、この200件という数字は表面化したものであり、実際にはもっと多いと考えられます。逆走事故自体は以前から存在していたと思われますが、近年のドライブレコーダーの普及により、逆走車が撮影・録画されるケースが増え、注目が高まったと考えられます。
恐ろしい点は、年間200件の逆走のうち約2割が事故に発展しているという事実です。来るはずのない対向車が突然こちらに向かってくると、余裕があれば脇によけることも可能ですが、スペースも時間もない場合、ドライバーはほとんど何も対応できません。逆走による死亡事故の割合は、一般的な事故の15倍にものぼるというデータもあり、逆走は極めて危険な行為です。
そのため、逆走で事故を起こすと、多くの場合、逆走した側に100%の過失があるとされ、多額の損害賠償金を支払うことになります。仮に事故に至らなくても、逆走は道路交通法違反です。警察に取り締まられた場合、9000円の反則金と違反点数2点が課されるほか、場合によっては3か月以下の懲役または5万円以下の罰金が科されます。
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逆走事故はなぜ起こるのでしょうか。逆走事故の約6割が、高速道路の出入り口、サービスエリア(SA)・パーキングエリア(PA)の出入り口、またはジャンクション(JCT)付近で発生しています。本来の入り口や出口を間違えてしまい、慌ててUターンやバックを行った結果、対向車線に誤って進入してしまうケースがほとんどです。また、複雑なジャンクションでは標識があっても見落としてしまい、進行方向を誤ることがあります。夜間や視界が悪い状況、慣れていない道路では特に発生率が高くなります。
一般道では、一方通行の道路に誤って進入してしまうケースや、複数車線を右折する際に誤って対向車線の左折レーンに入ってしまうケースが多く見られます。右折先に対向車がいれば逆走はほとんど起きませんが、二車線以上の広い道路や、たまたま対向車がいない状況では、逆走に気づかず走り続けてしまう場合があります。また、右折の際に交差点をショートカットする行為も逆走を引き起こす原因となります。
年齢別のデータを見ると、逆走事故の6〜7割が65歳以上のドライバーによるものでした。さらに、ドライバーの疲労や飲酒運転、認知症なども逆走を引き起こす原因とされています。一人ひとりが注意を払うことは重要ですが、完全にミスを防ぐことは難しいのが現実です。そこで、逆走を防止し警告するための対策がますます重要となります。
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国土交通省が中心となって進めている逆走防止対策のひとつは、ドライバーが進行方向を間違えて逆走しないよう、物理的および視覚的な効果によって注意を喚起する方法です。
たとえば、高速道路の入口部分では、路面にカラー塗装を施して判別しやすくする、また看板を設置して誤進入を防止するといった方法がすでに実施されています。また、出口で進入しようとすると道路に描かれた表示が立体的に浮き上がるという錯視効果を活用した標識も、100カ所以上に設置されています。2023年の調査によれば、この標識を導入した結果、逆走事案が9割も減少したそうです。
さらに、路面に段差(ブレードやウェッジハンプ)を埋め込み、正常に走行する場合には問題がありませんが、逆走した際に大きな振動や衝撃音を体感させるという対策もあります。また、逆走車をパンクさせる「トラフィック・スパイク」を埋設する国もありますが、日本での実用化は現時点では難しいようです。
料金所手前に「特別転回」の案内看板を設置することも、逆走防止対策の一環です。「特別転回」とは、高速道路の降り口を間違えた際、次のインターチェンジ(IC)でスタッフがいるレーンに進入し申告することで、行き過ぎた分の料金を支払うことなく目的のICに戻れる仕組みを指します。この仕組みを事前に知っていれば、間違えてもパニックを防ぐことができます。そのため、いくつかの料金所では特別転回を周知するための看板が設置されています。
AIや5Gを活用した最新の通信技術は、逆走対策にも大きく貢献しています。そのうちのひとつは、道路側で逆走を発見し情報を収集する仕組みです。
たとえば、準ミリ波レーダーやマイクロ波センサー、3Dステレオカメラを道路脇などに設置して車両を分析し、逆走車両をリアルタイムで検知します。収集した情報は、逆走車両自体や周辺エリアを走行中の車両に伝達されます。これを可能にするのが、高速かつ低遅延の情報伝達を実現する5G通信です。
2024年から愛知県の高速道路に導入されたシステムでは、逆走車両を検知すると、LEDプロジェクタによって路面にピクトグラムを投影し、ドライバーに警告を行います。
さらに、スマートフォンアプリやETC2.0、Bluetoothビーコンを利用して逆走車に警告音を発信する仕組みや、自分が逆走した場合に警告が届く技術も開発されています。最新のカーナビには、逆走を検知して警告を発する機能を搭載しているものもあります。
ユピテルのレーザー&レーダー探知機「SUPER CAT」シリーズには、逆走が発生しやすいポイントなどの特に注意して運転するべき場所をドライバーにお知らせする機能があります。
こうした技術により、ドライバーは自分がうっかり進行方向を間違えた際に迅速に気づくことができ、逆走車が周囲にいる場合にも早めに対応することが可能になります。ミスそのものを100%防ぐことは難しいですが、最新技術の導入によって逆走事故のリスクは大幅に軽減するでしょう。
逆走事故は、重大な交通事故の一因となり、多くの命を危険にさらしています。物理的および視覚的な対策に加え、最新のAI監視技術や5G通信技術、さらにはカーナビも、これらの事故を未然に防ぐための有効な手段となっています。また、私たち自身が逆走しやすい場所を理解し、常に注意を怠らず安全運転を心がけることが重要です。
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