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宇宙技術とICT。リモートセンシングでスマートシティに向けて膨らむ期待

2023.5.22

民間企業が宇宙ビジネスに次々と参入するようになり、宇宙に関わる分野で活躍している技術が身近な場面でも見られるようになってきました。中でも様々なセンサーを搭載した人工衛星は、私たちの生活をいっそう便利で安全なものにしています。ICT(情報通信技術)を宇宙から支えるセンシング技術について解説します。

宇宙技術と情報通信技術 私たちの生活を劇的に変えるICTの活用

宇宙 テクノロジー

普段はあまり意識しないかもしれませんが、私たちは常に多くのセンサーに囲まれて暮らしています。人が通ると光るライト、温度を調整するエアコン、防犯カメラ、自動ドア、自動検温装置。もちろん、スマホにもタッチセンサーや傾きを感知するジャイロセンサーが搭載されています。このように、センサーで音や光、温度などの量を感知・検出する技術はセンシングと呼ばれ、ICT社会を支えるカギとなっています。

ICT(Information and Communication Technology)は、IT用語の中でも特にコミュニケーション、つまり情報のやり取りと深く関わる言葉です。多くのモノがデジタルでつながるICT社会では、宇宙とのCommunicationだって欠かせません。今、私たちの頭上には8000以上の人工衛星が周回しています。種類としては軍事衛星、気象衛星、カーナビに使われる測位衛星などに分けられますが、中でも多いのが、通信・センシングに使われる衛星です。通信衛星と地球観測衛星(リモートセンシング衛星)を合わせると全体の6割以上になるのだとか。

これまでにも宇宙関連の技術、いわゆるスペーステックは宇宙旅行や宇宙葬、宇宙空間での太陽光発電の計画といった壮大なものから、その力やメリットを日常生活に応用した消臭衣類、ブランケット、断熱材に低反発素材まで、様々な形で活用されてきました。では、人工衛星のセンシング技術は、私たちの暮らしにどのような影響を与えているのでしょうか。

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AIにビッグデータ テクノロジーの急成長が相乗効果で宇宙技術を加速させる

センシング技術には2種類あります。ひとつは、対象物の近くで測定を行う「スマートセンシング」。日常生活で接するセンサーのほとんどがこれにあたります。それに対して人工衛星で使われるのは「リモートセンシング」。対象物から遠く離れた場所で測定や遠隔操作を行う技術です。

リモートセンシングのために人工衛星が搭載しているセンサーには、光化学センサーとマイクロセンサー(電波センサー)があります。光学センサーは、モノに当たって反射した太陽の光を測るもの。一方、マイクロ波センサーは、人工衛星からマイクロ波を発射した時の反射や、対象物自体が発するマイクロ波を測るものです。光学センサーは夜間や天気の悪い時には測定できませんが、マイクロ波センサーなら時間も天候も関係なく、地形や海面の温度、雲の状態などを測定できます。

こうして測定された衛星データは、生活の様々な面で活用されています。例えば10分ごとに算出される海面温度分布は、気象予測はもちろん漁業関連の分野で操業決定に利用され、陸と海の地形情報は社会インフラや防災に活用されます。たとえば、放牧地の牧草地がどんな状態なのかを観測すれば、牛をいつ、どこに放牧するかの決定ができます。近年では衛星データを使って地域別で稲の作柄を合理的に予測できるようになり、水稲予測にも衛星データが活用されるようになりました。

AIやビッグデータ(人為的な認識が難しい巨大な情報を管理する技術)に加え、人工衛星のセンサーが広範囲を24時間測定し続けることで、私たちは環境のわずかな変化や異常に即応することが可能になったのです。

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リモートセンシングでも、スマートセンシングでも、センシングの技術はその分析方法や、他のどんな技術と組み合わせるかで活用の範囲が広がります。例えばドローンやAIと組み合わせると、MaaS(Mobility as a Service=サービスとしての移動)を始めとした都市開発や災害対策、農業や災害時の保険金支払い期間の短縮まで、その活用範囲を格段に広げることができます

このように、リモートセンシングは私たちの生活に不可欠ですが、課題もあります。まず、毎年1000基以上が打ち上げられているという人工衛星の宇宙ゴミ問題。さらには人工衛星に対するサイバー攻撃です。ただし、攻撃といってもミサイル等による人工衛星自体の破壊ではなく、そのサービス網のハッキングや乗っ取りに警戒が必要なのです。実は、宇宙に存在する機器というのはサイバーセキュリティの面で弱いところがあるのだとか。実際、アメリカの大手セキュリティ企業は、「2023年脅威動向予測レポート」の中で、2023年に注意すべき11のサイバーセキュリティ事案として、「人工衛星やそのほかの宇宙上の資産へのハッキング」を挙げています。

解決すべき課題があるとはいえ、未来のスマートシティでは、センシング技術の重要性が高まるのは事実です。社会の問題をデジタルの力で解決するうえで、目に見えないセンサーの役割は、ますます欠かせないものとなっていくでしょう。

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【執筆】ユピスタ編集部
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