スマホやワイヤレスイヤホン、ノートパソコンなどのガジェットから電気自動車(EV)まで、二次電池(充電可能な電池)は私たちの生活に欠かせない重要なアイテムです。二次電池の需要が急増する中、主力ともいえるリチウムイオン電池に代わる新勢力として「ナトリウムイオン電池(SIB)」が脚光を浴びています。塩の主成分として有名なナトリウムを使った電池が、今なぜ注目されているのでしょうか。
本記事ではナトリウムイオン電池のメリットを詳しく解説します。現在の主流でもあるリチウムイオン電池と比較して、その性能や安全性はどれほど信頼できるのかということに加え、2026年の時点で中国メーカーを中心に量産化が加速し、EVや電力貯蔵システムで実用化され始めている最新の普及状況も網羅します。
ナトリウムイオン電池(SIB:Sodium-ion Battery)は、名前の通りナトリウムを原料とする充電式電池です。プラス極とマイナス極の間をナトリウムイオンが行き来することで、電気を供給したり充電したりすることが可能になります。
一方で、現在、スマホやEV車で使用されている電池はほとんどがリチウムイオン電池です。しかしリチウムイオン電池の原料であるリチウムはどこでも採れるものではありません。オーストラリアやチリなど一部の地域だけに偏っており、供給には特定の国や地域に強く依存せざるを得ない状況です。
また、近年はリチウム需要の多さから生産が追い付かず、さらにリサイクル率(回収・再資源化)も5〜10%以下とまだまだ低いため、安定的な供給を現実のものとするには課題を抱えているのが現状です。
その点、ナトリウムイオン電池に使われるナトリウムは、私たちの身近にある「塩」の主成分です。塩は広大な海から豊富に入手できるだけでなく、かつて海だった地層からも採掘できるので、多くの国が無尽蔵・安価で手入れられます。
しかも、ナトリウムイオン電池とリチウムイオン電池は原料こそ違いますが基本的な構造は類似していて、これまで使用していた電池の製造設備が流用できます。このため、低コストで製造できるナトリウムイオン電池がリチウムイオン電池に続く脱炭素電池の新しい切り札として注目されているのです。
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資源が豊富かつ低コストで製造できることだけがナトリウムイオン電池のメリットではありません。電池としての性能もすぐれています。まず、日常で使用する際の重要な要素となる充電速度は、リチウムイオン電池と同程度あるいはそれ以上も可能で、充電時に熱くなりにくいことから急速充電に向いているとされています。
また、耐用年数の目安となるサイクル寿命(電池残量が100%から0%になって充電を繰り返す回数)も技術開発に伴って年々向上し、リチウムイオン電池に匹敵する長寿命のものも登場しています。
そして、何より優れているのが使用温度範囲です。リチウムイオン電池が作動するのは0℃〜40℃程度、最適温度は15℃〜25℃で、非常に低温・高温な場所では発火や劣化の危険があります。しかし、ナトリウムイオン電池の作動範囲は−40℃〜80℃と、極端な環境の中でも高いパフォーマンスが期待できます。
加えて原材料のナトリウムは熱暴走を起こしにくいうえに安全性が高いこともメリットです。リチウムイオン電池の誤った処理などによる発火事故が問題となっていますが、ナトリウムイオン電池の場合は輸送時や利用時の発火リスクをほぼゼロにできると考えられています。もし、将来的にナトリウムイオン電池を全固体化できれば、安全性はさらにアップするでしょう。さらに、ナトリウムは毒性が低いので、リサイクルする場合にも有毒ガスが発生したりせず、環境への負荷を抑えられるのも大きなメリットです。
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このようなメリットの多いナトリウムイオン電池にもデメリットがあります。ナトリウムイオンの体積はリチウムイオンの約2倍なので、ナトリウムイオン電池が蓄えられるエネルギー量は同サイズのリチウムイオン電池に比べ、単純計算で半分ということになります。このことからもわかるように、ナトリウムイオン電池は大きく、重くなりがちです。その結果として主な用途は、工場や商業施設や病院のような場所に設置する定置用蓄電池や、一部のEV車に限られています。
また、ナトリウムイオン電池はリチウムイオン電池と構造は同じでもイオンの種類が違うので、使う電極の素材は変えなければなりません。このため、電極素材を新しく研究し、開発する必要があります。
現在、ナトリウムイオン電池の開発で先頭に立っているのは中国です。量産が本格化したのは2023年頃から。ある中国企業が開発したナトリウムイオン電池を搭載したEV車は過酷な環境下のテストでも安全性が確認され、2026年半ばまでに販売が開始される予定です。
一方、日本でもある企業が大学との共同研究で、電極の素材として酸化鉄の一種が使えることを発見し、低コストでの量産が実現に近づきました。また、別の日本企業は全固体ナトリウムイオン電池の開発に成功し、2024年からサンプルの出荷を開始しています。
宇宙や深海などのような、電池が必要となる過酷な環境は、ますます増えていくでしょう。世界中がナトリウムイオン電池の今後に注目しています。
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ナトリウムイオン電池は特定の資源に依存することなくエネルギーを貯蔵し、脱炭素化していくための非常に重要な電池技術となるでしょう。もっとも、リチウムイオン電池が消えてしまうことはなさそうです。状況によってさまざまなタイプのものを使い分けることが可能な電池には、持続可能なエネルギー活用へのさらなる貢献が期待されています。
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