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MaaSとは?交通と都市のDXはどこまで推進されたか

2022.3.24

今、世界中で「MaaS(Mobility as a Service)」の実用化に向けた動きが活発化しています。自動運転やAI、オープンデータなどを掛け合わせ、次世代の交通を生み出す「MaaS」。これによって制御された都市交通は、安心安全かつ無駄を省き、より良い社会の実現に貢献するとされています。MaaSの現状と今後の動向について解説します。

MaaSとは?交通と都市が連携する未来

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MaaS(マース)とは、車での移動も含め、宿泊も、鉄道の利用も、共通のプラットフォームでサービスが連携している状態のことを表しています。MaaS=車の自動運転のことだと思われることもありますが、実はそういうことではないんです。

車を取り巻くテクノロジーが飛躍的に向上するなか、近年では自動車自体が周囲の情報を把握してドライバーに危険を知らせたり、ドライバーに代わって運転を支援したりしています。その進化の中で、自動運転システムだけではなく、人々の移動情報をビッグデータやネットワークとして捉えること。そして未来の都市“スマートシティ”として交通サービス全般が連携して制御されること。これがMaaSの概念です。

MaaSは、進化の度合いを「レベル」として区分しています。例えば現代の日常生活においては、スマートフォンで目的地を設定すれば、利用すべき交通機関や乗車時間、乗換駅や、一番出口に近い車両までを一挙に示してくれますよね。この連携状態を、MaaSでは「レベル1」と呼んでいます。これがさらに整備されれば、検索だけじゃなく、予約・支払まで一度にできるようになるなど、ユーザーの利便性はもっと高まります。この段階が「レベル2」です。これがさらに進み、交通事業者間の連携が進むことでサービスが定額制になったり(「レベル3」)、最終的には事業者のレベルを超えて、地方自治体や国が都市計画へMaaSを組み込むこと(「レベル4」)も想定されています。

MaaSが実現する持続可能性。都市と地方のDXを推進

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このようなMaaSの進化、いわば交通のDXは、交通を起因とする社会問題の解決に役立ちます。

まずはMaaSと都市の問題を考えてみましょう。都市に人口が集中する流れが世界的に加速する中で、交通渋滞や排出ガスによる環境悪化が深刻化しています。そのため今後も人々が生活を維持していくためには、渋滞で進まない道路や、交通弱者への配慮を欠く現状を克服できる、合理的な交通システムの構築が不可欠だといえます。また都市のエネルギー消費を抑え、環境負荷を低減することも必要です。

そんな中でMaaSは、様々なユーザーのルート検索情報などを基に、人々の行動様式をビッグデータとしてクラウドに蓄積します。そしてこれが事業者間で共有されれば、迂回路による交通渋滞の回避や、交通手段の無駄のない最適化など、ヒトにとっても環境にとっても価値ある効果が生まれます。MaaSは都市のビジネスの可能性を広げるだけではなく、都市の持続可能性を考えるうえで非常に重要な変革なのです。

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続いて、MaaSと地方の問題です。地方で問題になっているのは、過疎化、少子高齢化。そしてそれにより公共交通機関の維持が困難になっていることです。乗客が少なく「空気を運ぶバス」などと揶揄されることも。しかしMaaSの普及によってデータを収集できれば、無駄なく最適化された交通機関の提供につながります。バスの停留所などの再配置や、鉄道の不採算路線を見直しての代替サービスの提供など、データを基に公共交通機関の運営効率化を図ることができるのです。

また地方都市において手軽な移動の足になるとされる、1人〜2人乗り用車両「コンパクトモビリティ」もMaaSとの連携が期待されています。どこに住んでいても交通手段が確保されるようになれば、誰もが交通弱者ではなくなり、安心安全な地方コミュニティが実現できます。そうすれば人口流出の抑制や、高齢者の運転免許証返納率の上昇に貢献していくでしょう。

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MaaSはこのように、都市と地方の交通DXを推進することで持続可能な社会を実現します。「都市や地方を住みよく、エネルギーの無駄がないよう発展させることは、空気からCO2を取り除くためのテクノロジーよりも、注目される」と、ある国連機関は発言しているほど、重要な取り組みとなっているのです。

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開発が進むMaaSの事例

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それでは最後に、現在既に実用化されているMaaSプロジェクトをいくつかご紹介します。

まずはフィンランドで開発されたMaaSアプリ。これは世界初の交通サブスクリプション型アプリです。これまでは、目的地に向かうまでに複数の交通機関を利用した場合、もちろんそれぞれに運賃を支払う必要があり、また利用回数が増えるほど負担額も増えるのが当然でした。しかしこのMaaSアプリでは、定額で全ての交通機関を利用可能。バスや自転車シェアなどの様々な交通手段を組み合わせ、最適な移動体験を提供するというサービスです。またタクシーの利用などもサービスに含まれているため、公共交通機関の運行が少ない地域での利便性が向上するうえ、ドア・ツー・ドアの快適な移動も可能。交通弱者とされる高齢者や障害がある方の外出の機会を増やすと期待されています。フィンランドのこの仕組みは「レベル3」と評価され、これまでのMaaSの1歩先を行くサービスとして知られています。

また被災地でもMaaSが活躍を始めています。東日本大震災により甚大な被害を受けた「JR気仙沼線・大船渡線」は、その復旧が困難であったため、鉄道再建ではなくバスによる新しい交通システム「BRT(バス高速輸送システム)」を導入しました。路線跡をオンデマンドの自動運転車専用レーンへと変更し、スピーディで安全便利な高速輸送サービスを提供しています。またバスの機動力を活かし、街の復興状況に合わせたルート設定や、仮設住宅の位置を踏まえたBRT駅の増設など、柔軟な対応が行われています。

モビリティの技術を活かしMaaSを実現

MaaSは、移動サービスの提供によって持続可能な社会を構築し、新たな価値観やライフスタイルを創出します。長年モビリティに携わるユピテルも、テクノロジーを活かし持続可能な社会を実現すべく貢献していきます。

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【執筆】ユピスタ編集部
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