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LPWA(低消費電力広域ネットワーク)って何?活用が広がるその用途とは

2023.7.24

テレビやエアコン、照明や鍵…身の回りの様々な機器がインターネットに接続される、IoT(モノのインターネット)時代が到来しました。瞬時に大容量のデータを送れる5G(第5世代移動通信システム)も話題を集めています。その一方で、低消費電力広域ネットワーク、LPWAが密かに活躍しています。通信速度が遅く、少量のデータしか送れないLPWAが注目されている理由は?未来のテクノロジーを支えるネットワークのひとつ、LPWAを紹介します。

IoTになくてはならない無線通信。用途に合わせて使い分ける規格とは

LPWA

私たちは複数の無線規格を普段の生活の中でうまく使い分けています。例えばBluetooth※1。これはBluetooth対応の機器同士を直接繋げる方法で、数m程度の近距離通信に適した規格です。電力をほとんど消費せず、一度ペアリングすれば次からは設定不要。こうした特徴は、毎日使う機器接続にはぴったり。実際、Bluetoothでイヤホンやスピーカーをスマホに、キーボードとマウスをPCに繋げているという人は多いですよね。

また、自宅や店舗で主に使用するのはWi-Fi※2 でしょう。Bluetoothより遠距離で通信することができ、写真や動画などの大きなデータを高速でやり取りすることが可能です。Wi-Fiのほかに、最近は超高速・超低遅延の5Gも使えるエリアが広がり一般化しつつあります。ただし消費電力が大きく、5Gを長時間使う際はモバイルバッテリーがないと不安、というスマホユーザーもいるかもしれません。

そのような中で、高速でも大容量でもないのに大注目されている無線規格があります。それが「LPWA(Low Power Wide Area)」、日本語では「低消費電力広域ネットワーク」と呼ばれる無線規格です。LPWAの通信速度は、Wi-Fiの何と4000分の1。それなのに、2021年に5億だった接続回線数が、2024年には12億に達するとさえ予測されています。いま、LPWAがこれほど注目されているのはなぜでしょうか。

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省電力、広範囲、同時接続。LPWAを使うメリットとは

LPWAは、高速通信を行うブロードバンドに対し、周波数帯の狭い低速のナローバンドといわれる通信方式を使っています。通信速度は前述の通りかなり遅く、送れるデータもせいぜい名刺1枚程度。しかし、その分Wi-Fiや5Gに負けない遠距離通信が可能で、ある実験では123km以上のデータ通信に成功したほどです。

しかも、LPWAには電力消費が少ないというメリットもあり、乾電池やボタン電池1個で何年も通信を続けることができます。つまり、電源に接続する必要がなく、バッテリー交換やメンテナンスもほとんど不要なわけですから、運用コストをぐっと抑えることが可能なのです。加えてノイズに強く、たくさんのデバイスを接続するのも得意という特徴を兼ね備えています。

ブロードバンドが「道幅の広い高速道路」であるとすれば、LPWAは「自転車やバイクが通る細い道」だと言えるかもしれません。多くの荷物をスピーディに運ぶ際は高速道路を使い、大型トラックで運ぶのが最適ですが、特に急いでいない少量の荷物を運ぶなら、自転車やバイクを使ったほうが効率的で経済的ですよね。しかも、細い道なら高速道路よりずっと簡単に・低コストで遠くまで敷設することができます。

実際、LPWAの特徴を活かした様々な場所での利用が進んでいます。特に、物流管理などの産業用途では積極的に利用されてきました。しかし近年では、私たちの身近なところでもLPWAの利用が進められています。

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官民一体となって進めるLPWAを使ったデータ活用の場とスマート化の拡大

LPWA

LPWAは省電力・多デバイス接続・遠距離通信OKが特徴なので、まずはモバイルGPSとして使うのに最適。モノに装着して流通経路を追跡したり、商品の盗難防止などに利用されたりしています。また、メンテナンス不要という特徴を活かして、山奥の建設現場やビニールハウス、広い工場内の監視、海の水位・海水温を測定するセンサーなどにも利用されてきました。いずれも送信するのは位置情報や数桁の数字だけなので、LPWAでも十分間に合います。

名古屋市では一般家庭100件のLPガスメーターに、小さなLPWAモジュールを取り付けました。これを利用して毎日送るのはガスの残量。それまで人の手で行われていた検針をLPWAによるデータ収集に変更することで、ガスの配送回数は3割減、残ガス率は半分になったそうです。しかも通信料は、月額たったの40円でした。福岡市でもガスと水道メーターのデータ収集をLPWAで行う実証実験を実施。長野では水源や配水池の稼働状況を常時監視するために、また新潟市ではマンホールの監視にLPWAを利用しています。そのほか街路灯の設置情報や3密検知など、官民一体となったLPWAの活用が社会インフラに広がっています。

もちろん、大容量のデータを遅延なく瞬時に送りたい時はWi-Fiや5Gが欠かせません。しかし、僻地や郊外において省コストでネット接続を可能にするLPWAもまた、スマートシティを支える必要不可欠な技術であることに変わりありません。

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未来のテクノロジーを支える低消費電力広域ネットワークが創るスマートシティ

産業界から個人の生活を支える社会インフラまで、LPWAは幅広い業種に利用され、活用され始めています。用途に応じた様々な無線規格が使い分けられる未来のスマートシティでは、LPWAもそのひとつとしてさらに活用の範囲が広がっていくでしょう。

※1 「Wi-Fi」は「Wi-Fi Alliance」の商標又は登録商標です
※2 Bluetooth®ワードマークおよびロゴは登録商標であり、Bluetooth SIG, Inc. が所有権を有します。


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【執筆】ユピスタ編集部
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