これまで子ども向けとされていた趣味やコンテンツを全力で楽しむ大人たちのことを、最近では「キダルト」と呼んでいます。例えば、ひと昔前に一世を風靡した育成ゲームや懐かしのプラモデルの復刻版、トレーディングカードやぬいぐるみなどにキダルトたちが熱中しているのです。
「推しがメロい」「復刻版がエモい」──ときめく「メロ」とノスタルジーの「エモ」が同居したキダルト界隈では、最新フィギュアと懐かし玩具が並走し、幅広い年齢層に裾野を広げる。大人がハマる、キダルトおもちゃ事情をご紹介します。
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これまで子ども向けとされていた趣味やコンテンツを全力で楽しむ大人たちのことを、最近では「キダルト」と呼んでいます。例えば、ひと昔前に一世を風靡した育成ゲームや懐かしのプラモデルの復刻版、トレーディングカードやぬいぐるみなどにキダルトたちが熱中しているのです。
「推しがメロい」「復刻版がエモい」──ときめく「メロ」とノスタルジーの「エモ」が同居したキダルト界隈では、最新フィギュアと懐かし玩具が並走し、幅広い年齢層に裾野を広げる。大人がハマる、キダルトおもちゃ事情をご紹介します。
キダルト(Kidult)とは「子ども(Kid)」と「大人(Adult)」を組み合わせた造語で、子ども向けとされてきたモノに興味を持って楽しむ大人を指します。キダルトたちはプラモデルやフィギュア、カプセルトイなどに心をときめかせ、真剣に全力で遊びを楽しんでいます。メインとなる年齢層は30〜40代で、もちろんもっと広い世代にもキダルトは存在しています。
キダルトが注目される背景のひとつに、近年顕著になっている多様性を尊重する傾向が挙げられます。「いい大人が子ども向けのおもちゃにハマって…」と、ひと昔前ならちょっと変わった人と思われたかもしれませんが、今は多様な個性が認められるようになり、世間体を気にして、「エモい」「メロい」という感情を抑え込む必要はなくなりました。「エモい」とは、「気持ちが揺さぶられてぐっとくること」、「メロい」は「メロメロになるほど素敵・かわいい・かっこいい」という意味です。さらに、これらを多く感じる場面では「かわいいが大渋滞」「ビジュ(ビジュアル)良すぎ、ガチでメロつきがエグい」などと表現します。
いわゆる「オタク文化」が「推し活」へと名を変え、社会的なハードルが下がったことも、キダルトが増えた一因かもしれません。さらに、遊びなどによる癒しが必要とされていること、ソロ活など自分の時間を大切にするWell-being(ウェルビーイング)の重要性が認知されたこともキダルト増加の要因と考えられます。

子ども向けコンテンツを楽しむとはいえ、キダルト消費には子どもたちの遊びとは大きく異なる特徴があります。
ノスタルジックなものにハマる人が多いのがキダルトのひとつの特徴です。たとえば子どもの頃に流行ったおもちゃの復刻版やミニチュア、お菓子を見かけ、懐かしさからついつい手に取ってしまうといったことがあります。
さらに、大人が持っている経済力が、最大ともいえるキダルトの特徴でしょう。ある程度好きなものを購入できる経済力が可能にするのは、子ども時代に夢見た「大人買い」。フィギュアやトレーディングカード、マンガ、プライズ品などを1つ2つと地道に集めていた子ども時代と対照的に、コンプリートを目指して一気に箱買いをするキダルトは多いものです。
なかには、もうひと昔前の1960年代や1970年代のレトロな玩具、ソフビなどをコレクションするキダルトもいます。こうした希少価値の高いおもちゃやホビーには、大変な値段がつくのは想像に難くないでしょう。
子どもの頃にお小遣いでは手が出せなくて悔しかったという思いが、キダルト消費を後押ししているのかもしれません。
SNSを上手に利用して積極的に推しへの愛を発信し、同じ趣味を持つ仲間と繋がりを持つキダルトもたくさんいます。コレクションを撮影してSNSにアップしたり、ファン同士でコミュニティを形成してオンライン・オフラインともに推し活を楽しんだり、仲間と情報交換をしたり。なかにはインフルエンサーとして、営利を目的とした発信へと拡大するケースも少なくありません。
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こうしたキダルト消費は、社会にもさまざまな影響を与えています。少子化が進んでいるにもかかわらず、おもちゃ市場は2023年度に初めて1兆円を突破しました。これにはキダルト消費が影響していると考えられています。売上伸び率の大きい商品には、高クオリティのフィギュアやハイテクトイなど、大人向けのおもちゃが多く含まれています。
たとえば、ある人気ブロックトイの大人向けシリーズでは、アート作品や有名建築、人気SF映画に登場する建物や乗り物を再現するセットが販売されており、1万ピースを超えるセットや10万円以上の製品もあるほど。
加えて、カプセルトイにも、お酒やアクセサリー・コスメなどキダルトをターゲットにしたものが増えてきました。1000円を超えるような高価格帯のカプセルトイも登場しており、精巧に作られたハイクオリティのフィギュアや、有名ブランド・人気作家とのコラボ商品をゲットすることができます。
また、ゲームセンターなどの景品、いわゆるプライズ品の高品質化もすすんでいます。これらのグッズは市販されていないこともあり、リユースショップやフリマアプリなどで取引されているものも少なくありません。
さらに、各所で展開されるコラボカフェでは作品の世界観に彩られた店内、作中の料理やキャラクターのイメージドリンク、限定のノベルティやグッズなどがあり、「ついついドリンクをおかわり」なんてことも。キダルトの熱量と購買力があるからこそ、その「ついつい」を楽しめる余裕があり、醍醐味となっていることでしょう。
今後、美容やIoTを利用した商品など、さらに多ジャンルのキダルト向け商品の展開も予想されています。心とお財布に余裕があるキダルトたちが次にどんなコンテンツに興味を持ち、進化させていくか楽しみですね。
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大人が全力で遊び、ときめき、楽しむことは今のストレス社会にあって決して「おかしなこと」ではなく、むしろ「必要なこと」なのかもしれません。サブスクなど課金方法も多様化しており、キダルト界隈はますますジャンルや年齢層を広げ、盛り上がっていくことでしょう。
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