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海外で普及しているラウンドアバウトとは。日本では駅構内に?

2023.9.25

ラウンドアバウトは多くの国で普及している環状交差点ですが、日本ではまだ見たことがないという人のほうが多いかもしれません。この見慣れないスタイルの交差点は、信号も一時停止もないのに事故を防ぎ、なおかつ地球にも優しい交差点なのです。ラウンドアバウトのシステムやメリットに加え、日本で行われた珍しいラウンドアバウトの実証実験について解説します。

信号なし!「ラウンドアバウト」とは?一時停止不要の環状交差点が安全な理由

ラウンドアバウト

ラウンドアバウト(roundabout)と呼ばれる「環状交差点」は、その名の通りドーナツ状の「環(わ)」をかたどった交差点です。そのルーツは今から100年以上前のイギリスにあり、現在では多くの国が取り入れているポピュラーなものとなりました。

円形の道路というと、駅前のロータリーや、信号機が設置されたロータリー型の交差点を思い浮かべる人もいるかもしれません。ロータリーや一般的な交差点とラウンドアバウトの大きな違いは、ラウンドアバウトには「信号機も一時停止もない」という点です。信号ナシ、一時停止ナシで、どうやって安全に交差するのでしょうか。

通常の交差点は2つの道路が十文字に交わり、車は信号機の指示によって停止・進入します。一方、ラウンドアバウトは時計回りの一方通行なので、交差点に入る時は右から来る車だけに注意すればOK。先に交差点内を走っている車がなければ、一時停止なしで進入し、行きたい道に近付いたらそのまま左折して出ていくことができます。通常の交差点よりもはるかに見通しが良いので、「先にラウンドアバウト内を走っている車が優先」というルールを守れば、信号機や一時停止がなくても安全なのです。

日本におけるラウンドアバウトは2014年9月の道路交通法改正によって法整備され、青地に白い3つの矢印が入った標識も作られました。現在は全国の約140カ所にあり、毎年少しずつ増加しています。

事故を減らし地球にも優しい?!ラウンドアバウトに期待される効果とメリット

ラウンドアバウト

ラウンドアバウトには多くのメリットがあります。まず、信号や一時停止がなく、道路がカーブしているため、ドライバーはより周囲に気を配るようになり、進入時にも交差点内を走る時にも自然とスピードを落とします。車のスピードが下がれば当然ながら安全性が向上し、逆に事故発生率は低下します。このことから、ラウンドアバウトは特に重大な事故を減少させる効果を持つとされています。国交省のデータによると、ラウンドアバウトの導入による事故の減少率は、世界各国の全事故で見ると約40%、人身事故に限定すると80%以上となっています。

また、ラウンドアバウトは信号や一時停止がなく、待ち時間が減るので渋滞緩和にも効果的。前述の国交省による調査では、軽井沢における社会実験の結果、平均の待ち時間が10秒減ったと報告されています。たった10秒と思うかもしれませんが、待ち時間が減ればアイドリングによる騒音が減り、車の燃費向上や二酸化炭素の排出量削減にも繋がります。さらに、災害時に停電が起きても、そもそも信号がないので交通が混乱することがありません。

ラウンドアバウト自体の形や中央のシマ部分の装飾を工夫すれば、景観形成にも大きな効果が望めます。世界には地域独自のモニュメントが併設されたラウンドアバウトがたくさんあり、日本でも伊賀市に手裏剣をデザインしたご当地ラウンドアバウトが登場しています。ラウンドアバウトは人や車、さらには地球に優しく、そして地域の活性化にも役立つ交差点なのです。

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駅構内に歩行者用も登場?日本ならではのラウンドアバウト事情とは

多くのメリットがあるラウンドアバウトですが、海外に比べると日本ではまだまだ普及しているとはいえません。というのも、ラウンドアバウトには通常の交差点より広い敷地が必要なため、国土の狭い日本では設置が困難という場所も多いのです。また、交通量が多い交差点ではラウンドアバウトが渋滞の原因となることもあるため、日本では1日あたりの交通量が1万台以内の市町を設置の目安とする傾向があります。

ラウンドアバウトは車の事故を減らす一方で、歩行者や自転車にとっては必ずしも便利とはいえなかったり、危険度が増したりすることも。これはドライバーにとっても同様で、特に初心者や高齢者がスムーズに利用するには慣れが必要です。日本でラウンドアバウトが定着するには、もうしばらく時間がかかりそうです。

そんな中、新宿駅構内で歩行者用ラウンドアバウトの実証実験が行われました。乗り換え客が行き交う場所に、エレベーターを中心とした「ラウンドアバウト」を設置し、パーテーションなどを使って歩行者を一方通行に誘導。歩行者の流れをセンサーで記録して、混雑緩和への効果を検証しました。日本の大都市における駅の混雑ぶりは世界でも知られており、新宿駅は何と毎日350万人以上の人々が利用しています。駅の構内に歩行者向けのラウンドアバウトを設置するのは、世界的にも珍しい試みだとか。日本のラウンドアバウトは、クルマだけでなく人の混雑緩和にも一役買うかもしれませんね。

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メリットを最大限活用して独自の進化を遂げる?日本のラウンドアバウト

ラウンドアバウトには多くのメリットがあり、何よりも安全性の向上、事故の減少に大きく貢献します。日本で普及させるためには多少の課題もあるとはいえ、今後、より多くの交差点に導入されていくかもしれません。近い将来、状況に合わせて日本独自の進化を遂げたラウンドアバウトがお目見えするかもしれませんね。

ユピテルのレーザー&レーダー探知機は、進行方向にラウンドアバウトがあるとあらかじめお知らせします。ラウンドアバウトに慣れていなくても、事前に心構えができれば安心です。


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【執筆】ユピスタ編集部
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