あらゆるモノがインターネットに接続される時代において、技術革新の中心を担うのが「電波の周波数帯域」です。その中でも、マイクロ波より周波数が高く、波長が短い「ミリ波」の利用が進められるようになりました。本稿では、通信の主役となるマイクロ波とミリ波の違いを解説するとともに、次世代通信のインフラに関連するプラチナバンドやテラヘルツ波の利用も踏まえ、その進化と未来像を考察します。
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あらゆるモノがインターネットに接続される時代において、技術革新の中心を担うのが「電波の周波数帯域」です。その中でも、マイクロ波より周波数が高く、波長が短い「ミリ波」の利用が進められるようになりました。本稿では、通信の主役となるマイクロ波とミリ波の違いを解説するとともに、次世代通信のインフラに関連するプラチナバンドやテラヘルツ波の利用も踏まえ、その進化と未来像を考察します。
「マイクロ波」と「ミリ波」は、いずれも現代の通信技術において重要な役割を果たしている電磁波で、それぞれに異なる利用分野や特徴が存在しています。
・マイクロ波の特徴と活用
マイクロ波は、波長が10〜100mm、周波数が300MHz〜300GHzの範囲にある電磁波です。幅広い利用分野があり、衛星放送、中継放送、無線LAN(Wi-Fi)、そしてETCがその例です。また、電子レンジに使用される電磁波もマイクロ波であり、食品中の水分子を振動させ、その摩擦熱で加熱する仕組みとなっています。
・ミリ波の特徴と活用
対して、ミリ波はさらに周波数が高く、波長が短い電磁波です(波長1〜10mm、周波数30〜300GHz)。マイクロ波よりも高精度かつ高密度なデータ通信に適しており、5G(第5世代移動体通信)をはじめ、自動運転における衝突防止レーダー、空港の保安検査で使用される金属探知機、医療用の計測器など、センシング技術や通信技術に幅広く応用されています。
・性能と課題の違い
マイクロ波とミリ波はどちらも直進性が強いという特徴があります。しかし、ミリ波は波長が短いため物体に遮られる特性が強く、一定距離以上の通信は難しくなることがあります。宅配便に例えるなら、マイクロ波は整備された道路を利用して自動車配送を行う方法に似ており、安定して遠くまで到達可能です。一方、ミリ波は電線やビルに遮られやすいため、ドローン配送のように限定された範囲での利用が主となります。
現在、Wi-Fi機器には2.4GHzと5GHzの周波数帯が利用されています。一方、スマートフォンの5Gでは、4G周波数帯の転用(NR化)に加えて、周波数が6GHz未満のSub6(サブシックス)と、約28GHzのミリ波が使われています。ミリ波による5Gは高速通信が可能になり、動画などのダウンロードが速くなるメリットがあります。しかし、その一方で、電波が遠くまで届きにくいことや障害物の影響を受けやすいというデメリットもあり、エリアの拡大に苦戦している状況です。
2030年頃のサービス提供開始を目指している6G(第6世代移動通信システム)では、ミリ波に加え、0.1THz〜0.3THzのテラヘルツ波の活用が検討されています。6Gは、現在の5Gに比べて高速かつ大容量の通信を可能にするとともに、通信の遅延をほぼゼロに近づけることで信頼性の向上を図り、より多くの端末を接続することを目指しています。この進化により、SF映画さながらの未来が実現するかもしれません。例えば、電話の相手を3Dのホログラムとして表示する技術や、身体のセンサーを通じて人間の五感や思考を仮想空間に転送する技術などが期待されています。
ただし、周波数が高くなるほど障害物による電波の減衰が強まり、遠くまで届きにくいという特性が課題となります。そのため、電波の届きやすさに優れている700MHz〜900MHzのプラチナバンドの利用も進められています。周波数の特性を十分に考慮し、これらの課題を解決して技術を実用化することが6G実現の鍵といえるでしょう。
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通信のイノベーションによって、人々の暮らしは大きく変わりました。新たな通信デバイスの登場は、社会や文化にも大きな影響を与えてきました。通信技術の歴史を俯瞰してみると、その進化は周波数帯域の拡大とともに歩んできたといえるでしょう。
まず、音声の時代です。ラジオに使用されていた電波は長波・短波・中波が中心でした。日本のラジオ放送は1925年(大正14年)に始まりましたが、昭和の初めまでは放送メディアといえばラジオが主流でした。その次に訪れた映像の時代では、テレビが超短波(VHF)および極超短波(UHF)の電波を利用していました。日本で初めてテレビ放送が行われたのは1953年(昭和28年)です。
ラジオやテレビは、一方向に情報を発信する「ブロードキャスト型」のメディアでした。しかしその後、1980年代中頃からインターネットが普及し始めたことによって、通信の形態は大きく変化しました。現在ではスマートフォンやSNSの登場により、個人間で双方向にコミュニケーションが行える「インタラクティブ型」の通信が浸透しています。さらに、通信技術はマイクロ波やミリ波、そしてテラヘルツ波といった高周波帯域への拡大が進行しています。このような技術革新により、大容量通信と高速通信が可能となり、センシング技術との組み合わせによって産業分野では物流管理や施設運営、さらには遠隔医療や教育、自然災害の予測などさまざまな用途が期待されています。
インターネット時代において、ワイヤレス通信が社会に及ぼした影響は計り知れません。現在では、ウエアラブルデバイスやIoTセンサーが実用化されていますが、テラヘルツ波などの次世代通信技術が普及する未来には、より斬新で画期的なデバイスが登場する可能性もあるでしょう。
技術革新は、周波数帯域という“波”の拡大と連動しながら時代を刷新し、人々の生活を豊かに変える力となっています。この進化は、現在もなお続いています。
情報化社会はめまぐるしく変化を続けており、次々と新しい技術革新が生まれています。電波は、いまや電力などのエネルギーと同様に社会の重要なインフラのひとつとなりました。あらゆるデバイスが通信によってつながる未来には、SF映画のような社会が実現する可能性もあるでしょう。マイクロ波とミリ波の利用拡大には多くの課題があるものの、さらなる技術革新によってこれらの壁を乗り越える力が生まれるのではないかと期待されています。通信技術の“波”がもたらす未来に、今後の発展を期待しましょう。
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